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特に既往歴のない高齢者に対する骨粗鬆症治療薬の選択

No.4733 (2015年01月10日発行) P.54

遠藤直人 (新潟大学大学院医歯学総合研究科機能再建医学講座整形外科学分野教授)

登録日: 2015-01-10

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

私は小児病院に勤務していますが,他科の知人から,骨粗鬆症の治療薬について相談を受けることがあります。しかし,この十数年間に数多くの新薬が発売され,どの薬剤も有効性が高いと報告され,適切な選択方法がわかりません。特に既往歴がなく,骨粗鬆症以外は健常に見える高齢者には,どの薬剤を勧めるべきでしょうか。新潟大学大学院・遠藤直人先生のお考えを。
【質問者】
西須 孝:千葉県こども病院整形外科部長

【A】

骨粗鬆症は骨が脆弱になり,骨折をきたすもので,高齢者に重篤な障害をもたらします。骨密度は骨強度を測る1つの指標で骨密度低下は骨脆弱ひいては骨折につながりますが,一方,仮に低骨密度であったとしても疼痛などの愁訴をきたさない例もよく見受けられます。また,脊椎骨折は本人に認識されずに骨折に至っていることもあり,画像で初めて既存骨折として確認される例も多くみられます。高齢者では,骨は脆くとも外見は元気で健常に見える人もおられます。このように,骨の状況を外から推し量ることはなかなか難しいものです。
したがって,ご質問の「特に既往歴のない高齢者」においても,今一度,患者さんの骨折危険因子を評価することが大切でしょう。(1)年齢,女性であれば閉経の有無,閉経年齢,(2)身長,体重(body mass index:BMI),(3)食事内容,アルコール,喫煙,さらに運動習慣を含めた生活内容,(4)骨粗鬆症や骨粗鬆症性骨折の家族(両親)歴,その上で,(5)骨量測定と画像(脊椎;骨折の有無を確認)検査,血液検査などを行います。
以上よりその人の骨折リスクを推し量ることができます。簡便な評価にはWHO骨折リスク評価ツール(FRAXR)の利用も有用と思います。
ご質問は生活習慣で大きな問題はなく,骨量も十分で,ほかの疾患も有していない人を想定されていると思います。その場合の薬剤選択は,本人に疼痛などの症状があるか,脊椎に既存骨折があるかが1つの基準となるのではないでしょうか。
大きな問題がない人で骨量も比較的維持されていれば,ビタミンDあるいは選択的エストロゲン受容体モジュレーター(selective estrogen receptor modulator:SERM)はいかがでしょうか。ビタミンDは日本人,特に高齢者で不足しています。あるいは女性であれば骨に有効であるSERMから始めてもよいのではないでしょうか。その後,骨量の推移,骨折危険因子,年齢を考慮してビスホスホネートへの移行も考えられると思います。
重度の骨粗鬆症に対する副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)は,現時点では適応にはならないと思います。

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