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NOACにおけるモニタリングの必要性

No.4748 (2015年04月25日発行) P.63

北島 勲 (富山大学大学院医学薬学研究部臨床分子病態検査学講座教授)

登録日: 2015-04-25

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant:NOAC)について。トロンビン阻害薬,第Ⅹa因子阻害薬などを使用した場合,プロトロンビン時間国際標準化比(prothrombin time-international normalized ratio:PT-INR)などで評価できない理由をご教示下さい。 (千葉県 K)

【A】

長年用いられているワルファリンは,その有効薬理作用を示す血中濃度幅が狭く,食事やほかの薬剤との相互作用や薬物代謝の個人差の影響が大きいことなどの理由により,服薬用量設定のためにPT-INRによるモニタリングが実施されています。PT-INRは利用される試薬にワルファリンによる値付けが行われている(international sensitivity index:ISI,国際感度指数)ため,ワルファリン服用者のみに利用すべきです。一方,NOACは有効薬理作用を示す血中濃度幅が広く,血中半減期が約半日と短いため,採血時間による凝固検査値変化が大きいなどの理由から,モニタリングは不要とされています。
しかし,高度腎機能障害者や超高齢者におけるNOAC服用中の出血事象の報告を契機に,NOACのモニタリングに関する議論が活発に行われるようになってきました。現在,トロンビン阻害薬ダビガトランの血中濃度測定にヘモクロットアッセイ,感度が高い検査としてトロンビン時間,エカリン凝固時間,抗トロンビンアッセイが推奨され,出血に対する警鐘として活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT)が検査室では有用とされています(文献1)。また,第Ⅹa因子阻害薬の高感度検査として抗第Ⅹa因子アッセイが有望で,活性化凝固時間とPTは薬物濃度依存的な延長が認められています(文献1)。
臨床現場ではPTとAPTT測定が汎用されているので,その評価について述べます。服薬2~4時間後の血中濃度がピークとなる時点でPT(注:PT-INRではない), APTTが異常延長(たとえばダビガトランのAPTTが80秒を超える場合)を認めた場合は,出血副作用の危険性が高まっている可能性を示唆しています。トラフ時にPT, APTTの延長を認めた場合は,さらに要注意です。ピーク時にまったく延長が認められない場合は,まず服薬アドヒアランスを確認する必要があります。ただし,アピキサバンは検査値への影響が少ないため,可能なら第Ⅹ因子活性の測定が望ましいでしょう。PT, APTTは標準化された検査でないため,施設間差が生じる点に注意すべきです。
以上,NOACに対する凝固検査実施は,ワルファリンの用量設定のためのPT-INRのようなモニタリングという考えではなく,安全性チェックという表現が適切ではないかと考えます(文献2,3)。実際,(1)服薬アドヒアランスチェック,(2)血中薬物濃度の推定によるNOAC体内蓄積や過剰量チェック,(3)虚血性脳梗塞の血栓溶解療法適応のための判定,(4)服薬患者の外傷など不測の事態への対応,などの臨床現場の必要性に応じて血液凝固検査を適宜実施する必要性はあると考えます(文献4)。一方でNOACの治療効果判定の観点から,どのような凝血分子マーカーが適しているかについては今後の検討課題と思われます。

【文献】


1) Garcia D, et al:J Thromb Haemost. 2013;11 (2):245-52.
2) 北島 勲:血液フロンティア. 2012;22(7):45-52.
3) 北島 勲:心原性脳梗塞と経口抗凝固薬. フジメディカル出版, 2013, p88-99.
4) 北島 勲:医薬ジャーナル. 2014;50(2):97-102.

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