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語られない症状を見抜く [プラタナス]

No.4764 (2015年08月15日発行) P.3

宇藤 薫 (鎌ヶ谷総合病院救急科医長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-14

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  • 救急においては緊急性と重症性の判断が重要である。早期診断ができれば喜ばしいことであるが、救急外来の一度の診察だけでは確定診断に至らないことも多い。たとえ確定診断がつかなくとも、どのような病態なのかを把握し、治療の方向性を考えていく心構えが重要である。病態把握や確定診断のために適切な問診と身体所見をとり、必要な検査や治療を適宜行う必要がある。診察技術を深めていくことにより、複合的に絡み合った病態や患者が自覚していない症状を把握すれば、予後改善に結びつけられる。

    ある70歳代後半の女性。数日前から異常行動が出るということで、家族に付き添われて近医を受診した。MRI検査で脳腫瘍が疑われて当科へ紹介受診となった。意識clearで独歩可能であり、一見、何ら緊急性がないように思える患者であったが、初診時の詳細な問診や全身診察で気になる所見が複数出てきた。


    患者は、70歳代に指摘されたという喘息の既往があるが、これまでに発作や浮腫、喘鳴を生じたことはなかったそうである。身体所見では両下肺野のfine crackleがあった。さらに、筋力低下や深部腱反射異常はないものの、最近、両上肢の痺れが出現して書字不良になっていた。当初、患者や家族からは、気道や上肢の症状についての訴えはまったくなく、全身診察の中で判明した。

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