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安全で効率的な内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を行うための工夫について

No.5288 (2025年08月30日発行) P.50

池之山洋平 (三重大学医学部附属病院消化器病センター 上部消化管部門長)

野村達磨 (鈴鹿中央総合病院消化器内科医長)

登録日: 2025-09-01

最終更新日: 2025-08-27

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  • 安全で効率的な内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)を行うための工夫についてご教示下さい。
    鈴鹿中央総合病院・野村達磨先生にご解説をお願いします。

    【質問者】
    池之山洋平 三重大学医学部附属病院消化器病センター 上部消化管部門長


    【回答】

    【浸水法をきわめることが,安全で効率的なESDを行うための解決策のひとつとなる】

    消化管ESDで重要なことは,垂直,水平断端を陰性で切除することだと思います。以下,その条件を達成し,かつ“安全”で“効率的”な筆者らが行っているESDの工夫について述べさせて頂きます。

    まず“安全”については,術中の偶発症である出血,穿孔を防ぐことが重要と考えます。出血のコントールに関しては,血管に対するプレ凝固,出血時のrapid hemostasis(急速止血)が達成されることが重要と考えます。

    血管を発見するには,クリアな内視鏡視野が維持されることが重要です。先端先細りフードを用いた浸水法では,ハレーションがなくなり,視野が約1.3倍と拡大されます1)。脱気下浸水の状態ではスコープの操作性が改善され,重力の影響を受けづらくなり粘膜下層への潜り込みが容易となります。そのため,浸水下では出血の原因となる血管を発見することが容易となります。

    安全に手技を行う上で最も重要なのが,スコープの操作性を維持することだと思います。深部結腸や十二指腸などでは,スコープの操作性が極端に悪くなることを経験します。その際にはバルーンアシスト下にESDを行うことで,スコープの押し引き,トルクを伝えられるようになり,引き続き欠損を閉鎖することも可能です2)3)。また,呼吸性変動,心拍動に対してもポケット法を用いることで,粘膜下層の血管に対し,良い操作性でアプローチできます4)。浸水法やポケット法はキャストフードのような先端が4mmと細いフードを用いる5)ことで,より精確な剝離が可能となるため,血管と周囲のわずかな粘膜下層を残すこともできます。さらに,良い操作性の維持は結果的に術中の穿孔も防ぐと考えます。

    残り1,257文字あります

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