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旅立った後は、祈るだけ(宮腰哲生)[プラタナス]

No.5229 (2024年07月13日発行) P.3

宮腰哲生 (札幌刑務所医務部第三医療課長)

登録日: 2024-07-13

最終更新日: 2024-07-10

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  • 旅立った後は、祈るだけ。

    Aさんに出会うまでは、そんな心持ちだった。

    刑務所などの矯正施設で精神科医として働いてきて、受刑者が健康に刑を務められるように心を砕いてきたつもりだが、病気が治っていようといまいと、刑期が終われば受刑者はそこを去る。精神科の場合、直接入院になるような症例を除けば、紹介状を片手に彼ら自身が生活の場や医療機関を探すことが多い。こちらは最後の診察で「頑張って」と声をかけ、旅立った後は幸運を祈るだけ、というのが常だった。

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