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それぞれの「真実」 [なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(85)]

No.4790 (2016年02月13日発行) P.70

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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  • ちょっとした事情で、医療事故裁判の判決書を読んだ。少なからず驚いたことに、内容がよくわからなかった。使われている用語や論理展開が、普段用いているものと違いすぎていたのだ。自分では理解しているつもりでいる医学が違う土俵で裁かれているような印象であった。

    まぁ、これは、お前がアホやからやろうと言われたらそれまでだ。しかし、もう1つの驚きは、もっと本質的なものだ。裁判が対象とする真実は1つであるはずなのに、原告と被告でここまで違った見方ができるのかという点である。

    まるで、それぞれの「真実」に立脚したパラレルワールドが存在しているかのような違和感だ。裁判では対立点を際立たせないと争えないのだから、いたしかたないのだろうが、言い分はどちらも相当な極論だ。なのに、判決は原告の完全勝訴。ホンマですか、そんなこと言えるんですか…。

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