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【文献 pick up】SGLT2阻害薬は急性心筋梗塞後亜急性期の2型糖尿病でも心血管系転帰を改善? 韓国観察研究―JAHA誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-07-20

最終更新日: 2023-07-20

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心筋梗塞(MI)の救命率は向上したが、救命後の心不全(HF)発症、そしてそれに伴う死亡リスクの増加はいまだに問題である[Bahit MC, et al. 2018

一方、MI発症後「慢性期」についてだが、2型糖尿病(DM)例に対するSGLT2阻害薬の「心血管系(CV)死亡・HF入院」抑制作用がランダム化比較試験"DECLARE-TIMI 58"の事前設定追加解析から報告されている。

そこで2型DM例におけるMI発症後「亜急性期」からのSGLT2阻害薬開始の有用性を検討したところ、「死亡・HF入院」リスク減少の可能性が示唆された。Journal of the American Heart Association誌7月8日掲載の、韓国・カトリック大学校のOsung Kwon氏らによる観察研究を紹介したい。

同氏らが解析対象としたのは、初発MIへのPCI成功から2週間以内の2型DM 28671例である。韓国公的保険データベースから抽出した。

これらをMI発症後にSGLT2阻害薬を開始した983例としなかった27573例に分け、傾向スコアでマッチさせたSGLT2阻害薬「開始」群(938例)と「非開始」群(1876例)の間で、「総死亡・HF入院」リスクを比較した。

平均年齢は57.2歳、80%が男性だった。

心保護薬はβ遮断薬を約8割が、またレニン・アンジオテンシン系阻害薬をおよそ7割が服用していた(群間に有意差なし)。

一方、血糖降下薬は、SGLT2阻害薬「開始」群でSU剤服用例が有意に多く(32.7 vs. 23.9%)、逆にDPP-4阻害薬は「開始」群で有意に少なかった(25.4% vs. 35.0%)。

その結果、2年間追跡時点の「総死亡・HF入院」発生率はSGLT2阻害薬「開始」群が9.8%、「非開始」群が13.9%となり、「開始」群における補正後ハザード比(HR)は0.6895%信頼区間[CI]0.540.87)の有意低値だった。

「総死亡」「HF入院」を個別に比較しても、「開始」群における有意な減少が認められた。

一方、非致死性の「心筋梗塞」「脳梗塞」リスクは「開始」群と「非開始」群間に有意差はなかった。

Kwon氏らはSGLT2阻害薬「開始」群における「死亡・HF入院」減少の機序を「血行動態改善」と考えているようである。

なお急性MI亜急性期からのSGLT2阻害薬開始によるCV転帰改善作用は、現在2つのランダム化比較試験"DAPA-MI"(本来なら本年6月終了予定)と"EMPACT-MI"(本年8月末終了予定)で検討中である。

本研究はThe Research Institute of Medical Sciencesとカトリック大学校から資金提供を受けた。

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