No.4759 (2015年07月11日発行) P.73
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-02-15
ひそかに日本百名山の登頂を考えている。本気で目指す人は計画的に登っているし、中には、NHKで放送されたように『一筆書き』で一気に登ってしまう人もいる。
私の場合、あくまでも、ひそかに、であるから、出張のついでに、とか、ふと思いついて、なのでなかなか進まない。それでも、すでに40座ちょっとは登っているから、死ぬまでにはなんとか達成できそうだ。
5月末、北海道大学へ呼んでもらった帰りに、阿寒まで足を伸ばし、雪の残る雌阿寒岳に登ってきた。標高1500メートル足らずであるが、雄大な活火山だ。
北海道の夜明けは早い。夜が明ける4時頃に登山開始。ホテルの朝食バイキングが終わるまでに戻ろうという、文字通り朝飯前の登山。快晴で景色も最高であった。
と書くと楽勝であったかのようだが、頂上付近は過酷であった。なんせ風が強かったのである。一時は、歩くどころか、まっすぐ立つこともできなかった。大げさなことを、と思われるかもしれないが、本当に、ストックに体を預けて前傾姿勢をとらないと吹き飛ばされそうだった。
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