株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

三尖弁閉鎖不全症(TR)[私の治療]

No.5111 (2022年04月09日発行) P.41

泉 知里 (国立循環器病研究センター心臓血管内科部長)

登録日: 2022-04-09

最終更新日: 2022-04-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 三尖弁尖および弁下組織の異常(一次性)や右室・右房の拡大に伴う三尖弁の接合不良(二次性)により,三尖弁に逆流が生じる疾患である。二次性の三尖弁閉鎖不全症(TR)が70~90%を占める。三尖弁逆流により静脈圧が上昇し,全身のうっ血をきたす(右心不全症状)。

    ▶診断のポイント

    肝うっ血や下腿浮腫,胸水貯留などの右心不全症状を呈する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    軽症TR,中等症TRでうっ血症状のない症例では,基本,治療の適応にはならない。治療の対象になるのは,重症TRでうっ血症状のある場合である。

    TRに対する内科治療や,フォローアップの頻度に関するエビデンスは乏しいが,通常,まず下腿浮腫や臓器うっ血,腹水などの右心不全症状に対して,利尿薬を中心とした内科治療を優先して行う。過度の利尿薬投与は心拍出量の低下や脱水症状を引き起こし,腎機能悪化をもたらすことがあるため,使用量については注意を要する。内科治療にもかかわらず右心不全症状が持続する場合には,外科治療を検討する。さらに,無症状であっても重症TRで右室拡大や機能低下が進行性の場合は,状況に応じて介入を考慮する場合がある。

    TRに対して外科治療に踏み切るタイミングは難しい。手術成績が大動脈弁や僧帽弁に比して悪いことや高齢者が多いことなどにより,手術時期が遅れがちである。手術成績は,術前の右室機能に左右されるため,右室機能低下が進行するまでに手術を行うことが重要である。60~70歳代前半の比較的若い重症TR症例では,症状が内科治療でコントロールできていても,早期に手術を考慮している。今後カテーテル治療などが導入されることが予想され,高齢患者ではカテーテル治療が主流になる可能性がある。

    左心系弁手術を行う際には中等症以上のTR,軽症TRでも三尖弁輪拡大や心房細動がある場合は,同時に三尖弁に対する手術を考慮する。

    残り1,007文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top