写真の日付はバブルが崩壊して世相もすっかり暗くなった1993年の夏。駆け出しの精神科医として、当時勤務していた病院の認知症病棟で徘徊を続ける担当患者さんの姿を撮ったものだ。昼間にもかかわらず両側を病室で挟まれた廊下は日光が入らず、蛍光灯をつけていても薄暗い印象があった。このような棟内風景をわざわざ写真に収めたのには理由がある。当時取り組んでいた学位研究のテーマが「精神疾患と生物時計障害」で、光環境と生体リズム障害の関係を調べていたからである。今でこそ日照のような強い光が生体リズムの調節に重要であることが広く知られるようになったが、その当時は臨床で光環境に注意が向けられることはほとんど無かった。
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