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カウントダウン[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(375)]

No.5086 (2021年10月16日発行) P.66

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2021-10-13

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定年の日まで半年を切った。気分はいよいよカウントダウンである。とはいうものの、実際のところ、かなり昔から始まっている。まずは学会からの退会。いちばん多い時には10近くもの学会に入っていたけれど、数年前から一つずつ辞めはじめていた。

今年度は、これまでに関係した国内外の学会すべてに出席して、お世話になった先生方や昔の仲間たちにご挨拶をと予定していた。それが新型コロナのせいでかなわなかったのは、さすがに心残りである。定年後は研究活動からは一切手を引くつもりなので、もうお目にかかることもないだろうし。

研究でなにが大変かというと、次にどのようなテーマに挑むかを決めることと、如何にしてそのための資金を得るかである。しかし、引退をひかえ、2~3年前からは悩む必要がなくなった。それだけで、こんなに気分が楽になるとは思ってもいなかった。

といっても、定年までにまとめなければならない論文はある。それもおおむね終了し、あと2つを残すだけだ。40年近く研究をして、原著論文が200編たらず。少なくもないが、多くもない。NatureやScienceにも出せたし満足すべきだとは思うが、人生の成果の大半が紙切れに押し込められたようで、寂しい気がしないといえば嘘になる。

特別講義に毎年お呼びいただいている大学が6~7箇所あった。これも定年を限りにお断りすることにした。それぞれに想い出があるので、最終回はどうしてもセンチメンタルになる。ある先生はお礼に立派な花束をくださって、涙が出そうになった。いくつかは、これも新型コロナのせいでZoom講義になってしまったのが残念だった。

続けてもいいのだが、講義というのは思いのほか難しくて、かなり準備が必要だし、集中してやらないと上手くできはしない。もう、そこまでやろうという気がしない。あとひとつの大きな理由は、定年を機会に辞めておかないと、いつまでも続けることになってしまうのではないかということだ。

4月からも継続してお務めする委員が5~6個残ってはいるけれど、思いっきり暇になりそうだ。一気に老けてしまう、あるいは呆けてしまうのではないかという気がしないでもないが、そうなったらその時のことである。老兵は消え去るのみ。とりあえず、今はできるだけカウントダウンを楽しんでいこうと思っている。

なかののつぶやき
「今回のエッセイを読んで、ひょっとしたら、ナカノは定年前でちょっと元気をなくしてるんじゃないかと思われるかもしれませんが、まったくそういうことはありませんのでご安心をば。寂しくないとは言いませんが、研究歴が40年近く、教授歴が四半世紀あまり、思い残すことはありません。きっと4月からはさぞかし伸びやかな気分になるだろうと楽しみにしています」

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