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激烈な狭心症 [プラタナス]

No.4816 (2016年08月13日発行) P.1

室生卓 (みどり病院心臓弁膜症センター内科/院長)

登録日: 2016-09-16

最終更新日: 2017-01-20

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  • 80歳代、女性。20年前に大動脈弁置換術(Medtronic Hall弁)を受けている。2カ月前から胸痛が出現するようになった。症状は労作とは関係なく、徐々に頻度が増えてきたため入院精査となった。入院後も発作は誘引なく突然起こり、亜硝酸薬の効果はなく、数分で自然に消失した。神経症とも思われたが、患者の話しぶりからはいかにも狭心症が疑われた。入院時の聴診所見では軽い収縮期雑音を聴取する以外に異常はなかった。早朝にも発作が起こることから、毎晩当直医は発作時の心電図をとるため身構えた。

    ある日、早朝に発作が起こり、うまく心電図で捕まえることができた。非発作時と比べると前胸部誘導で著明なST低下が認められた。直ちに冠動脈造影が施行されたが、有意狭窄は認めなかった。異型狭心症の診断となり亜硝酸薬、カルシウム拮抗薬など、考えうる限りの薬剤が処方されたが、まったく効を奏しなかった。
    再度原点に返って心音を記録したのが下図である。

    症状のないときのものであるが、患者の状態は不安定で呼吸が止められず、ノイズが多いが、ここにヒントが隠されていた。よく見ると、2音のある心拍とない心拍がある。頸動脈波形では2音のある心拍はdicrotic notchを認めるが、2音のない心拍ではdicrotic notchがなく、拡張期波の低下が著しい。再現性をもって認められるからノイズではなさそうだ。ということは、間歇的な大動脈弁の閉鎖不全、人工弁のスタックである!

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