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グリーフケア[私の治療]

No.5063 (2021年05月08日発行) P.65

二ノ坂保喜 (にのさかクリニック院長)

登録日: 2021-05-10

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  • グリーフケアとは,死別の悲嘆に対するケアである。
    それは,ホスピス病棟や在宅ホスピスに関わる人々や機関のみが行うべきものではなく,亡くなった方に関わるいろいろな人たちが,それぞれの立場から,様々な方法でアプローチするものであるだろう。もちろん緩和ケア病棟や在宅ホスピスの場でも,重要なケアのひとつであることは間違いない。

    人は生まれて,成長し,病を得,老い,そして必ず死を迎える。したがって人は誰でもが遺族となる。理論的にはわかっていても,身近な人,特に愛着の強い人との死別は強い悲しみを生じる。通常は時間とともに,周囲の人たちとの関わりの中で徐々に悲しみを思い出に変えていく作業(グリーフワーク)が行われていく。しかし中には,深い悲しみから立ち上がれないと思われる人や場合がある。

    ▶グリーフの心理過程

    グリーフケアに関わろうとするためには,グリーフの心理過程を理解し,グリーフワークを支援するための方策を会得する必要があるであろう。ここではウォーレンの理論を簡単に紹介したい。
    ウォーデン1)は,グリーフは,愛着のある対象との絆が失われたときにみられる心理的反応であるとする。それはモーニングワーク(喪の作業)の始まりである。

    通常のグリーフ反応は正常な心理的反応であることが多い。たとえば,感情面では,悲しみ,怒り,罪悪感,自責,不安と孤独感など,身体面では,腹部の空虚感,胸部やのどの圧迫感,離人感,息切れなど,認識の面では,(死の知らせを)信じない,混乱,故人の実在感,幻覚など,行動面では,睡眠障害,食欲異常,引きこもり,故人の夢,落ち着きのない行動など,多彩な症状が現れることがある。しかしこれらは決して病的な反応ではなく,適切な対応,関わりと時間によって,新たな生活,関係性を回復していくと考えられる。したがって,これらの反応に対しては,それが正常な反応であることを理解できるように伝える必要がある。

    しかし中には,死者との関係に問題があったり,死因に特別な状況があったり,災害などで遺体が見つからなかったり,精神的な問題があったり,ストレスへの対処能力が低い,などの要因があると,通常の悲嘆からの回復過程をたどることができず,回復が長引き,いろいろな心理的,身体的障害を残したりすることがあると言われる。

    以上を理解した上で,在宅ホスピスの現場でのグリーフケアを考察してみたい。

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