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便秘[私の治療]

No.5063 (2021年05月08日発行) P.40

神山剛一 (寺田病院外科・胃腸科・肛門科/日暮里健診プラザ予防医学管理センター副センター長)

登録日: 2021-05-07

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  • 在宅診療における便秘治療は,本物の便秘と見かけ上の便秘を区別することがポイントとなる。本来,便秘とは便の不適切な貯留が存在すべきであるが,リアルタイムに便の貯留を定量する方法が確立していないため,現状では「排便回数の低下」や「腹部膨満」,「便意があるのに便が出ない」などと言った状況から診断されることが圧倒的多数と思われる。もちろん,詳細な食事内容の評価や定期的な直腸診などを行うことで,本物の便秘と見かけ上の便秘の鑑別は理論上は可能とも言えるが,多くの現場から挙がってくる意見としては,下剤の使用法に難渋する状況である。このことからも,一般論として身体所見から便秘の鑑別を求めるよりも,下剤の適切な使用法への言及が,より実践的な便秘の対処法に寄与するものと考えられる。本稿では従来の論調から一線を画し,在宅診療における適切な下剤の使用法について解説する。

    ▶治療の実際

    一手目 :(初期投与)マグミット330mg錠(酸化マグネシウム)1回1錠1日3回(毎食後),またはモビコール(ポリエチレングリコール製剤)1回1~2包1日1回(朝)

    在宅に限らず,臨床現場において便秘が疑われた場合,酸化マグネシウムなどの緩下剤を試されることが多いが,その際に重要なのは,反応便から下剤の使用が適切だったかどうかを評価することである。評価に当たっては,ブリストル便性状スケールを用いることを推奨する。ブリストル便性状スケールに関する詳細は他稿に譲るが,7段階の便の性状と通過時間が相関しており,総じて下剤も通過時間を短縮することから,Type 6~7の便が見られたら,「下剤は十分効いている」と判断できるからである。

    ガイドラインにおいても,センナなどの刺激性下剤の連用は避けることが推奨されているため,どちらも初期投与として適している。酸化マグネシウムは安価なものの,高マグネシウム血症に対する注意が必要である。これらの投与によりType 3~5の円滑な排便が得られれば有効と言える。一方,初期投与でもType 6~7の泥状便や水様便が見られた場合は,便の貯留が少ない可能性が高く,その結果をもとに二手目に着手しても大きな支障はないと思われる。

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