医療は患者さん本人のためのもの,命は患者さん本人のもの……。そうわかっていても,周りのご家族は少しでも長生きしてほしいと,患者さん本人の思いとは違う選択をすることも多いものです。また,患者さん本人の意思表示が困難であれば,医療従事者もついついご家族の意見を聞いてしまいがちです。ご家族が患者さんの意思を頭では理解していても,心では迷ったり葛藤したりするということはよくあるケースだと思います。
第7回でも紹介したように,厚生労働省が作成した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」でも,本人の意思が確認できない場合は,本人の推定意思を尊重し,本人にとっての最善の方針をとることが大切だとされています(図1)1)。本人にとっての最善の方針は,医療・ケアチームで慎重に判断することが求められます。
しかし,本人が意思表示してそれを確認できる場合は,まずは本人の意思決定が基本となります。方針に迷った場合,この大原則に沿って意思決定支援を進めていくことが大切です。