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【医師×製薬企業コミュニケーションの「大変革」を読む ③】個別的接触が難しい時代に医療現場が製薬企業のオウンドサイトに望むこと(日本医事新報特別付録「製薬企業オウンドメディア最新ガイド2021」)

P.12

桑島 巖 (東京都健康長寿医療センター顧問/J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)理事長)

登録日: 2021-03-30

最終更新日: 2021-03-30

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10年ほど前から製薬企業・医療機器メーカーと医師との個別的接触が非常に難しくなってきた。病院や大学の改築に伴い医局を厳格なセキュリティーの下で管理する医療機関も増えている。こうした動きは、ディオバン事件をはじめ企業が関与した臨床研究不正事案が取り沙汰されて以来拍車がかかった。2020年の新型コロナ感染拡大に伴う「3密」の防止要請が政府や自治体から出されてからは、医師と企業との接触はいっそう厳しい状況となり、MRが医局前に待機する風景はもはや過去のものとなっている。

医薬品・医療機器情報への高いニーズ

しかしそうはいっても企業としては新薬などの情報を伝える必要があり、医師側も新薬や医療機器に関する情報をいち早く手に入れて診療に役立てたいと考えている。勤務医の場合、上司や同僚との会話の中で情報交換を行うのが一般的だが、その情報は製薬企業が主催する講演会で見聞きしたものである場合もあり、自分で情報源を確認しなければならない。現在、医学情報の主な情報源としては「PubMed」などの文献検索サイトや「Cochrane Library」「今日の臨床サポート」などのレビューサイト、さらにエムスリー、ケアネット、Web医事新報などの医療情報サイトがある。

一方、個人開業医の場合は、医局を離れた途端に同僚医師との情報交換が難しくなり、かつ日々診療に追われながら最新の医療情報にキャッチアップする必要があるため、製薬企業が提供するオウンドサイトからも医療情報を積極的に入手する必要が出てくる。

企業によるチェックが中立・公平な情報提供を阻害

臨床医が求めているのは中立的で正確な情報であり、企業に都合のよい情報ではない。特に薬剤に関しては、まず大規模臨床研究による確かなエビデンスがあるか否か、またその大規模に行われた臨床試験を適正に解釈しているかどうかである。

それらの情報の多くは、専門医を通じてWebや雑誌で紹介される。しかしスライドや資料にはスポンサー企業による事前のチェックが入っている。その基準は、日本製薬工業協会が設定するプロモーションコードに準拠したもので、他社製品に対する誹謗中傷、承認を受けた効能効果を逸脱した内容は厳しくチェックされ、他社製品との比較も企業によっては禁じるところがある。企業による一方的なスライド事前チェックは逆に専門医による中立・公平な情報提供や発言の自由を侵害している可能性があり、再考を要する。

多忙な医師やアナログ世代に配慮を

講演会のネット配信は予約制にしているケースが多いが、予約をとっておいてもその時間に別用が入ってパソコンの前に座ることができないことがよくあり、失念して視聴できない場合も多い。Web講演会は、ある一定期間であればいつでも視聴可能とするオンデマンド形式のほうが視聴者にとって便利である。

視聴する際に提示されるスライドは字が小さくて読みにくいこともしばしばであり、内容の確認がしにくい場合が多いため、ダウンロード可能であればなおありがたい。さらに講演内容をテキストでダウンロードすることが可能であれば、アナログ世代の50歳以上の医師にとっては非常に有用と思われる。

診療中に発生した疑問に速やかに対応するシステムも重要だ。例えば新薬の併用上の注意、手術における休薬期間、副作用などの情報は可及的早く知りたいことがある。そのようなときに企業の担当者が速やかにメールや携帯電話を介して対応するシステムがあると便利であり、リピーターも増えると思われる。

(日本医事新報特別付録「製薬企業オウンドメディア最新ガイド2021」の全文はこちらから無料でダウンロードできます)

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