サノフィは5月29日、新たに慢性閉塞性肺疾患(COPD)の適応を取得した「デュピクセント」(一般名:デュピルマブ)についてメディア向けセミナーを開催した。セミナーに登壇した奈良県立医大呼吸器内科学講座教授の室繁郎氏(写真)は、既存治療でコントロールが難しい2型炎症を伴うCOPD患者にとって「10年以上ぶりの新しい選択肢となる」と期待を示した。
デュピクセントは、IL-4およびIL-13のシグナル伝達を阻害することで2型炎症反応を抑制する完全ヒト型モノクローナル抗体製剤。2018年に既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の適応で国内での製造販売が承認され、気管支喘息など複数疾患に適応を拡大。2025年3月に6疾患目となるCOPDの適応を取得した。
COPDはこれまで、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、吸入ステロイド(ICS)の3剤併用が標準治療とされてきたが、室氏は効果不十分で、症状が増悪する患者の割合が51%に上るとの調査結果を説明。アレルギー要素を持つ患者に対し、既存治療と並行してデュピクセントを使用することで増悪の抑制が期待されるとした。
室氏はCOPDの国内推定患者数は約530万人に上るが、実際に治療を受けている患者は36.2万人程度という診断率の低さも指摘。2020年以降死亡患者数が増え続けていることから「高齢化の進展に伴い、今後はより一層の早期診断と治療介入が求められる」と強調した。
COPD治療に使用する場合の「デュピクセント」の用法・用量
通常、成人には1回300mgを2週間隔で皮下投与