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■NEWS 「iPS創薬」で初、家族性アルツハイマー病患者対象に第2/3相企業治験開始

登録日: 2025-06-04

最終更新日: 2025-06-04

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京大iPS細胞研究所の井上治久教授らは6月3日、同研究所で記者会見を開き、「iPS創薬」によって見出されたアルツハイマー病治療薬候補ブロモクリプチンについて、第1/2相医師主導治験に続き、家族性アルツハイマー病患者を対象とした第2/3相企業治験を開始したと発表した。

井上教授によると、iPS細胞を用いて治療薬候補を探すiPS創薬で、探索的試験から検証的試験である第2/3相試験に進んだのは初めて。第2/3相試験は東和薬品を治験依頼者として5月29日からスタートしており、三重大病院を中心に多施設で実施される予定。

家族性アルツハイマー病治療薬開発の意義を強調する井上教授(左から2人目)

■パーキンソン病治療薬ブロモクリプチンに一定の有効性

井上教授らは基礎研究の中で「プレセニリン1遺伝子変異を持つ家族性アルツハイマー病」患者のiPS細胞を大脳皮質神経細胞へ分化させ、その細胞を用いて抗アミロイドβ既存薬のスクリーニングを実施。パーキンソン病治療薬であるブロモクリプチンの抗アミロイドβ抑制効果が最も高いことを見出した。

家族性アルツハイマー病に対するブロモクリプチン投与の有効性・安全性を評価する第1/2相医師主導治験は2020年~2022年に行われ、治験参加者が8人と限られていたものの、プラセボ群と比べ認知機能と行動・心理症状の病状進行が抑制される傾向を確認した。

東和薬品はブロモクリプチンの後発品(ブロモクリプチン錠2.5mg「トーワ」)の提供を通じて第1/2相試験を支援。第2/3相試験は、既存薬の転用で新たな疾患の治療薬を開発する「ドラッグリポジショニング」の取り組みの一環として同社が主体的に関わることとなった。

「プレセニリン1遺伝子変異を持つ家族性アルツハイマー病」は、確定診断されている国内の患者数が100名前後と推定されている希少疾患。会見で井上教授は「特筆すべきは若くして認知症になられること。経過も比較的早い」と述べ、この疾患をターゲットとして治療薬開発を進めることの意義を強調した。

■東和・吉田社長「データ出てから1年以内に承認申請できれば」

会見では三重大医学系研究科の冨本秀和特定教授が、三重大病院などで実施される第2/3相試験の概要について説明。実施期間は2025年5月~2028年3月。24例(実薬群12例、プラセボ群12例)を目標に症例を集め、二重盲検比較試験・非盲検継続投与試験で有効性・安全性を評価するとした。

会見に同席した東和薬品の吉田逸郎社長は、豊富な既承認薬(314成分730品目)を持つジェネリック医薬品メーカーの強みを活かしてドラッグリポジショニングに継続的に取り組む考えを示しながら、治験データに基づく承認申請時期について「試験が終了しデータが出揃ってから半年~1年の間に承認申請できれば」との見通しを示した。

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