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分かれ道[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.92

新井貞男 (日本臨床整形外科学会理事長/あらい整形外科院長)

登録日: 2021-01-04

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分かれ道。選択と言いかえることもできる。ゴルフのパターで例えて申し訳ないが、スライスかフックか真っ直ぐか決断がつかずに打ち出してしまい、結局カップインできず、それどころかとんでもない方向へ行ってしまうことがある。また、迷ってもしようがないと、真っ直ぐ打ち出してカップインすることもある。駄目だからと言って、もう一度やり直しがきくわけではない。結果を受け入れて、切り替えて次に挑戦するしかない。それがゴルフである。

ゴルフでの例えだが、人生も似たようなものかもしれない。子どもの時から現在に至るまで大学の選択、専門の選択、開業の選択等々、その時その時で大いに悩み、その時の最良の選択をした、あるいは選択したつもりである。一応納得して選択した人生であるが、何かの折振り返ってみると、別の道があったのでは、と思うことがある。自分で選んだ人生であるが、様々な分かれ道で最良の選択をしてきたかというと、後戻りはできないが、別の生き方があったのでは、と不思議な気持ちになる。

大先輩の先生と話している時に、「どうしたら良いか迷うことがあって大変です」と愚痴を聞いてもらったことがある。すると、その先輩から、意外な慰められ方をしたのを覚えている。「選択に迷うということは、先に道が続いているからだ。選択に迷うのは将来があること、むしろ楽しむべきだ」と。先輩は「私などは、先が短いから迷うことが減ってきた」と笑いながら話してくれた。

選択に迷うことを楽しむという発想はなかった。できれば、今の仕事を放り出して様々なしがらみのない時が早くこないか、と思っていた。

今後は選択する度に迷うことを楽しめるように努力したいと思うが、クリニックの診療もあるし、学会等の役職もやっている。自分だけでなく、組織の皆にも影響することもあり、とても楽しむ気にはなれない。とにかく、分岐点に差し掛かったら、後で後悔することのないよう最良の選択をするよう心掛けたい。楽しめるような心境になるには、まだまだ修行が足りないと感じている。

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