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コロナ禍における外国人医療の諸問題[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.67

松本吉郎 (日本医師会常任理事)

登録日: 2021-01-03

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2016年3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」の中で、政府は2030年までに訪日外国人を6000万人に増やす目標を掲げていたが、今般の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、約3188万人近くあった訪日外国人数は、2020年8月で対前年同月比99.7%減少している。他方、在留外国人は、2019年度293万人(対前年20万人増)であり、コロナ対応で逼迫している医療現場において、外国人医療対策は引き続きの課題である。

厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症に関する外国人患者への医療提供体制構築の支援策として、「外国人対応マニュアル」や「ワンストップ窓口」、「多言語対応」について補助事業・委託事業等を行っているが、まだ十分とは言えない状況である。医療機関では、外国人患者から「PCR検査を受けたい」、「帰国の際に英文診断書を発行してもらえるか」等の問い合わせを多々受けており、地域によってPCR検査体制が異なることや、言語・コミュニケーション力不足により対応に苦慮している。また、地域によっては補塡事業として行っているところもあるが、医療機関が抱える課題として、未収金問題は深刻である。電話通訳についても課題を抱える医療機関は少なくなく、昨年4月より、日医医賠責保険の付帯サービスとして会員向けに医療通訳サービス(電話医療通訳・機械翻訳)が実施されている。また、日本医師会では、4月から5月にかけて外国人への医療相談を長年実施しているAMDA国際医療情報センターへの支援を行った。今後は、1件あたりに要する対応時間の長期化や、利用頻度の増加等を踏まえ、国の施策として、外国人の相談を一手に引き受ける外国人患者相談窓口集中センター(仮称)を医療機関の負担なしに利用できれば理想的である。

新型コロナウイルス感染拡大防止策については、日本人のみならず、外国人にも目を向けたきめ細かい対応が求められる。地域において質の高い医療を維持し、言葉や文化の壁を乗り越えるためには、個別医療機関の対応ではなく、国・自治体・医師会等の支援・連携がきわめて重要である。

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