株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

膝関節脱臼[プラタナス]

No.5044 (2020年12月26日発行) P.3

近藤英司 (北海道大学病院スポーツ医学診療センター教授)

登録日: 2020-12-26

最終更新日: 2020-12-24

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • NI君は、最も寒く雪深い季節である2月に新聞配達中、大雪に覆われた道路にできたマンホールの穴にバイクの車輪をとられ転倒し、膝関節を脱臼しました。この「魔のマンホール」は、北国においてはしばしば問題となっており、マンホール上の雪が下水の熱により溶け、圧雪された路面より深く窪んだ状態となります。そのため、特に夜間や大雪時は見えにくく、転倒や事故の原因となることがあります。人体最大の関節である膝関節の脱臼は、膝関節を支える主な4つ(前・後十字靱帯、内側・後外側支持機構)の中の複数の靱帯が断裂し、関節内の軟骨や半月板、時に神経・血管組織にも損傷が及び、機能障害を残すことが多い重篤な外傷です。

    近年、わが国で世界に先駆けて開発された膝関節鏡と、先輩達の研究や医療機器の進歩により膝関節鏡手術は普及し、めざましい発展をとげました。特に前十字靱帯損傷に対する自家腱を用いた鏡視下再建術は、安定した成績が得られるようになりました。一方、後十字靱帯は膝関節の中心に位置し「the soul of the knee:膝の魂」と呼ばれる最も重要な靱帯です。しかし、関節にかかる強大な力を制御しているため、その手術成績は前十字靱帯に比べ問題点が多い靱帯でした。さらに後外側支持機構は、その複雑な構造と再建方法が確立されていないことから、これまでは「the dark side of the knee:膝の暗黒面」と呼ばれ、それらの複合損傷は障害を残しやすく、最も治療が困難な外傷でした。しかし近年、その機能解剖や病態が明らかになるにつれ、それらの成績も徐々に改善してきました。

    残り340文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top