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昨今のWeb学術集会について[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.43

香美祥二 (徳島大学病院病院長・小児科学分野教授)

登録日: 2020-12-31

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コロナ禍の昨今、医療界の激変ぶりは言わずもがなである。最近では7割経済ということで、ニューノーマル(新常態)な世の中の見通しは暗い。小児科医の私からすると、COVID-19の影響(妊娠への不安、経済的不安)で、2021年度の出生数が1割減るとの予測を聞くと暗澹たる思いになる。これまでに蓄積したCOVID-19の知見を疫学的、科学的に分析することで、日本の現状にフィットとした医療、社会体制がとられ、世相に落ち着きが戻ってくることを切に願っている。

さて、令和2年8月に第123回日本小児科学会学術集会を担当校(徳島大学小児科学教室)としてWeb開催させて頂いた。簡単にその顛末をお話しする。

元々は4月開催のものがCOVID-19パンデミックにより延期され、最終的には、学会員、関係者の安全、安心を考慮して本形式となった。オンライン開催は小児科学会初の試みで、通常集会とは違うまったくの別物であった。

各会場に配信クルーを入れテレビカメラとPCカメラ、zoom機能を使い、現地会場の演者、司会と国内外の演者、司会を結び、主要演題プログラムを放映した。ほぼぶっつけ本番で、とにかく配信が止まらないか、誤配信がないかとか、コンベンション担当会社の方々とともに刻々と進むライブ配信をPC上で注視していた。海外と結ぶものは時差があるし、回線障害なのか音声トラブルもあり、携帯で遠隔地の先生と調整が必要であった。テレビ局員の気持ちが少しわかった気がした。会期中のログイン数は3万ほどあり、会員自らの都合に合わせて各セッションに予想以上の人数で参加したことが伺える。結論として、オンライン学会はデジタル時代の賜物であり、今回のような非常事態には大変有用であった。

会の大きな目標のひとつである小児医学、医療の最新知の情報共有は十分に達成できたのでは、と思う。一方、学術や医療を持続的に発展させるに不可欠な会員同士や海外科学者との交流、それを介した信頼感、連帯感を醸成する力が足りない。今後は、会の趣旨、規模、内容に合わせて、オンライン、オンサイト、両者のハイブリッド方式の使いわけが進むものと思われる。

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