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新型コロナウイルス感染症の嵐[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.41

山下秀一 ( 佐賀大学医学部附属病院病院長・総合診療部教授)

登録日: 2020-12-31

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新型コロナウイルス感染症は、全国の医療関係者にとっての最大の問題であるのみならず、近年の医療界にとっての大激震となってしまいました。全国の医療関係者の皆様の努力に感謝の意と敬意を表します。

佐賀大学医学部附属病院も4月上旬には新型コロナ対策本部を立ち上げました。経営に大きな影響が及ぶことはすぐに理解できましたが、本部長はあえて病院長が務めず、少しでも経営に公平な視点で行動できる副病院長に務めてもらうこととしました。外来患者さんが院内に入る前の問診と検温や、面会禁止と手術前の感染状況評価の手順など、少しでも新型コロナウイルス感染症が院内で発生する確率を下げる工夫をこの会議で話し合い、そのおかげで当院では現時点では新型コロナウイルス感染症の発症を見ていません。このような工夫は全国の医療機関で同じように一生懸命なされていることと思います。

皆様も実感なさっていることと思いますが、この新型コロナウイルス感染症の厄介なところは、無症状の感染者が数多く存在することです。2類感染症の縛りに入れ、必死でPCRの数を増やし、少しでも多くの陽性者を発見し隔離することで感染の拡大を抑える対策がとられてきました。しかしながら、PCRの感度と特異度を考慮すると、この方法が無理筋であることは医療者でなくても容易に想像できると思います。拙稿が印刷される頃には冬になりインフルエンザの流行も十分に想定できる状況になっていると思いますが、このままではどう考えても発熱と気道症状で来院する患者さんが被害を被る状況になることが危惧されます。

新型コロナウイルス感染症は、エボラ出血熱のような著しく致命度の高い感染症ではありません。人類はこのような感染症と共存しながら生き延びてきました。そろそろ医療者も一般の方も腹を括って、重症者の治療を中心に据え、軽症や無症状の方は自宅で安静にするという、通常のウイルス感染症への対応にスイッチするべきであると、現在危機感とともに強く感じています。

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