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少子化時代における「不妊治療と就労・キャリアとの両立」の重要性[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.33

遠藤源樹 (順天堂大学公衆衛生学講座准教授)

登録日: 2020-12-31

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日本は晩婚化、晩産化が止まらない一方で、日本の少子化が加速している(2018年の出生数:約92万人、2019年の出生数:約86万人)。しかしながら、その背景には、不妊に悩む夫婦の割合は約2割である一方、日本の体外受精の件数は世界最多であることが知られている。20歳代後半~40歳代前半の夫婦にとって、不妊治療、特に体外受精と就労との両立は最重要課題のひとつである。

不妊治療と就労の両立が困難な理由のひとつに、突発休がある。不妊治療は、女性の月経周期やホルモンの値・卵胞の状態に合わせて通院しなければならず、見通しが立ちにくい一面がある。不妊治療中の女性にとって、不妊症に関する様々な検査を受けるための時間を確保するために、遅刻・早退・休暇などで就労に支障をきたすことがある。特に生殖補助医療(ART)の場合、生殖医療専門の医師が、女性のホルモンの値や卵胞の発育などを確認しながら採卵日を決定するのは、採卵日の2日前であることが少なくない。そのため、予定していた仕事を急にキャンセルせざるをえないなど、不妊治療とキャリアとの両立に悩む女性も少なくないのだ。また、排卵誘発剤などの薬物治療など保険適用されている治療もあるが、体外受精は基本的に保険適用されない。体外受精は1回30万~100万円など、高額な医療費がかかるため、経済的負担が大きいのが現状である。特定不妊治療費助成制度があるものの、助成金の少なさ、所得制限などの問題があり、また、職場に「自分達が不妊治療をしていること」のカミングアウトの難しさもある。

少子化が急加速する日本において、不妊治療と就労・キャリアとの両立を支援する社会に変わるべきは「今」しかないと思う。

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