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棚からぼた餅[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(327)]

No.5037 (2020年11月07日発行) P.65

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2020-11-04

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棚からぼたもち、略して棚ぼた。誰もがあって欲しいと思うが、そうそう経験するものではない。しかし、絵に描いたような棚ぼたがあるということを知った。といっても、棚からぼた餅が落ちてきて口に入った、という話ではない。って、当たり前か。

身近な人に起こったノンフィクションだ。ある日、とある南の島から内容証明郵便が送られてきた。分厚い封筒で、裏側には弁護士・何の某という差出人の名前がある。その島に行ったことはあるけれど、数年前のことだし、もちろん罪を犯した記憶はない。

開けてビックリ玉手箱。その知人(以下、Aさんとします)の父方の祖父のお兄さんが亡くなられた。資産が1億円近くあるけれど、子どもはいない。なので、その大伯父さんの4人の兄弟姉妹に相続権が移行する。

しかし、すでに4人とも亡くなっているので、その4人の子孫の家系それぞれに、土地売却などの必要経費を引いて均等割りした遺産をお譲りしたい。ついては、書類に実印を押印の上、印鑑証明といっしょに返送してほしい、という手紙が入っていた。

Aさんから相談を受けた。これは新手の詐欺ではないかと。そりゃ疑うのが当然だろう。映画やテレビドラマならいざ知らず、こんなにおいしい話が本当にあるとは思えない。実印と印鑑証明で何か企てられていると考えるのが、常識ある大人の態度だ。

その書類を見せてもらったら、えらくきちんとしている。Aさんは、その大叔父さんに会ったことはおろか、そんな人が南の島にいるという話すら聞いたことがなかったという。しかし、添付の家系図には、Aさんの名前だけでなく、その姉弟の名前もしっかりと書いてある。もちろん正確に。

それでも心配なので、弁護士をしている義弟に真贋の判定を依頼した。すると、確かにその名前と住所で弁護士登録がされているし、内容的にも問題はないという。

3人兄弟で千数百万円だから、テレビドラマに比べると一桁から二桁少ない。とはいえ、1人あたり500~600万円の完璧なる不労所得が振り込まれてくるのだ。これを棚ぼたと言わずして何を棚ぼたというのか。

いやぁ、ホンマにこんなことがあるんですね。このようなお金は人間をダメにするから、どこかに寄附でもして、その残りは私を含む周りの人を誘って豪遊すべきだと、Aさんには強く勧めております。

なかののつぶやき
「遺産相続でもめるという話はよく聞きますけど、見ず知らずの人から遺産をもらえるなどという話を聞いたのは生まれて初めてです。日本は戸籍がしっかりしているからでしょうか、弁護士とはいえ、第三者が、生前にまったく関係のなかった親戚の住所まできちんと調べ上げることができるのには驚きです。自分にもこんな親戚がどこかにいてたらええなぁと思いますけど、まぁおりませんわな」

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