株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン 2020年版[ガイドライン ココだけおさえる]

No.5033 (2020年10月10日発行) P.31

山名哲郎 (JCHO東京山手メディカルセンター副院長)

登録日: 2020-10-12

最終更新日: 2020-10-07

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 主な改訂ポイント〜どこが変わったか

    1 総論:今回の改訂における大きな変更は,直腸脱を疾患として新たに加えたことと,各疾患を総論とCQに分けて構成して一般医家と専門医の両者が利用しやすいことを目指したことである

    2 痔核:総論では一般医家向けに疾患概念から診断・治療に至るまでの内容をまとめた。CQでは専門医向けに治療法の選択に有用な痔核の分類,結紮切除・ALTA療法・非切除術式のメリットとデメリット,嵌頓痔核への急性期治療を臨床重要課題として取り上げた

    3 痔瘻:総論では一般医家向けに疾患概念から診断・治療についてまとめ,さらに特殊な痔瘻として乳児痔瘻とクローン病に伴う痔瘻にも言及した。CQでは専門医向けに低位筋間および深部痔瘻に対する術式選択,乳児痔瘻の治療方針,クローン病に伴う痔瘻の外科的治療と薬物療法を臨床重要課題として取り上げた

    4 裂肛:総論では一般医家向けに疾患概念から診断・治療についてまとめた。CQ では専門医向けに内圧検査,薬物による括約筋弛緩,外科的治療を臨床重要課題として取り上げた

    5 直腸脱:本ガイドラインに今回から新たに加わった疾患である。総論では一般医家向けに疾患概念から診断・治療についてまとめた。CQ では専門医向けに排便造影検査,バイオフィードバック療法,経会陰手術と経腹手術それぞれの適応と選択すべき術式を臨床重要課題として取り上げた

    1 総論:2014年版から2020年版へ

    「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン2014年版」の初の改訂版として今回の第2版である「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版」が2020年1月に発刊された。
    今回の改訂版では2014年版で取り上げた痔核・痔瘻・裂肛の3大肛門疾患に加え,直腸肛門疾患診療の臨床上で重要な疾患の一つである直腸脱が新たに追加された。また前回の2014年版でCQの大部分を占めていた定義,疫学,病因,臨床所見,診断ならびにほぼ確立されている治療は,疾患トピックの基本的特徴として総論にまとめなおし,各疾患のCQは3〜5つの臨床重要課題に絞り込んで文献をレビューした(表1)。

    これによって一般医家が必要とする総論的なレビューから,専門医が実際の診断や治療に際して悩む臨床重要課題のレビューに至るまで効率よく利用できるように構成されている。

    2 痔核

    なぜ変わったか

    前回の2014年版では多くのCQは基本的知識の解説にあてられており,治療に関する臨床課題の解説が少なかった。今回の改訂版では前回のCQの大部分を占める痔核の基本的知識は総論としてまとめ,CQでは主に治療に関する臨床重要課題に絞り込んで重点的にレビューした。

    ◉実臨床での対応
    専門医以外の医師は本ガイドラインの総論を利用して疾患の概念から,診断,治療法を知ることで,診断から初期治療まで十分に対応することができる。痔核は出血・脱出・疼痛などの症状と肛門鏡による肛門診察に慣れれば確実に診断することができる疾患であるが,出血を主訴とする場合は患者の年齢に応じて初期の段階で下部内視鏡検査を行うことが望ましい。痔核の患者の多くは保存的治療として食物繊維と水分を十分に摂取する生活指導や,坐薬や軟膏による薬物療法で改善する。保存的治療を2〜4週間継続しても症状の改善が得られない場合は専門医に紹介する。

    手術適応を決めるための臨床分類(CQ1)は専門医の間でも大きな課題である。現時点で提唱されている臨床分類を国内外の文献で検証したが,本ガイドラインでは従来のGoligher分類以外の分類を提唱できる段階には至らなかった。痔核のALTA療法(CQ2)はgrade Ⅱ〜Ⅳの脱出性の内痔核には低侵襲かつ有用な治療であり,行うことを弱く推奨できるがエビデンスは弱い。結紮切除術(CQ3)は様々な形態の脱出性の痔核(gradeⅡ~Ⅳ)にも対応できる有用な治療法であり,エビデンスも強いため強く推奨できる治療法であるが,術後疼痛や後出血などのマイナス面も十分に理解し,患者の好みも考慮してその適応を決める必要がある。各種の痔核を切除しない術式(CQ4)については根治性では結紮切除術に劣るが,外来や短期入院で施行できるメリットがあるため弱く推奨した。嵌頓痔核の急性期手術(CQ5)は専門医でも治療方針に迷うが,今回は術後疼痛や合併症の点から行わないことを弱く推奨した。

    残り2,172文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top