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何十年ぶりかのテント泊登山[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(318)]

No.5028 (2020年09月05日発行) P.66

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2020-09-02

最終更新日: 2020-09-01

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20代の最後ぐらいにYMCAの登山学校に通ったことがある。その頃、友人に誘われて、ときどき登山に出かけていた。そうするうちに、しっかりと勉強してみたくなった。山岳会へ入るほどの根性はまったくないので、探してみたら、その登山学校があった。

4月に入学して8月まで、2週間に1回の座学と月1回の実地訓練だったと記憶している。座学では、歩き方、地図の読み方や天気図の書き方、山での調理などを学んだ。

実地は、ハイキング、オリエンテーリング、岩登りなどで、回を追うにつれ、背負う荷物を重くしていく。仕上げは槍ヶ岳。いまの体力ではとても無理だが、22~23キロのリュックを背負ってのテント山行だった。

例年、夏休みは海外の僻地だが、今年は無理なので、国内の山へ行くことに。山小屋はどう考えても密で気持ちが悪い。ならば何十年ぶりかのテント泊にチャレンジしよう。

とはいえ、いまひとつ自信がない。1泊2日で行ける簡単そうなところを探し、北アルプスの唐松岳から五竜岳への縦走に決定。これなら、スキー場のある八方尾根のゴンドラとリフトで標高1800メートルくらいまで連れて行ってもらえるし。

テントが軽量化されているのと、組み立てが簡単になっているのには本当に驚いた。食事だってそうだ。レトルトやアルファ米など、軽くて美味しいものがいっぱい売られている。材料工学の進歩は本当にすごい。

今やラジオ放送で天気図を書き取る人など皆無だろう。もっぱらSCWというネットの天気予報サイトを使っている。これはもう、信じられないくらいよく当たる。ちょっとした夕立まで前もってわかったりするので、逆恨みしてしまうほどだ。

天候に恵まれ、無事下山。この時期にしては珍しく、遠く離れている富士山まできれいに見えた。ただ、下山時はカンカン照りで、汗が滝のように流れて完全に脱水状態、一時はどうなるかと思ったけれど。

お盆前で、すこし遅いかと思っていたのだが、八方尾根のお花畑は見事に満開だった。そして、五竜岳の登山道では、驚くほどきれいな雷鳥が顔を出してくれた。
テントでビールを飲みながら立山連峰をゆったり眺めるのは最高だったし、満天の星も楽しめた。テント山行、癖になりそうだ。と、言ってみたいのではあるが、からだの節々がまだ痛い。それさえなければ…。

なかののつぶやき
「唐松岳~五竜岳縦走路からの富士山。左に見えるのは八ヶ岳です。暑かったけど、景色が抜群でごきげんな山歩きでした」

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