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なんでやねん[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(315)]

No.5025 (2020年08月15日発行) P.65

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2020-08-12

最終更新日: 2020-08-06

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毎年書いているような気がするが、病理学総論の試験は『Robbins Basic Patholo-gy』の原書持ち込みを許可している。紙の挟み込みは不可だが書き込みは自由。

みなさんならどんな書き込みをされるだろう? 普通に考えたら、本文の単語の下に訳語を書くとかぐらいではないか。しかし、多くの学生は、教科書の余白に極小の字でバカほど書き込みをしている。キーワードがわかれば、説明はそこに書いてあるのだから、英語の勉強をした方が早いやろ。

そんなことは意味がないと言っているのに、まとめを余白ページにぎっしり書く「写経派」の学生も後を絶たない。試験範囲は350ページもある。写経内容が出題される可能性は極めて低いことぐらいわからんのか。そんな時間があれば、理解に努めろよ。

3回連続の「絶賛の嵐」で書いたように、Zoom講義の評判がよかったし、教科書は平均で80%も読んだという。それに、今年は十分な教育ができなかったという負い目があるので、試験問題をうんと易しくした。

なので、高得点者が続出、全員合格ではないかと思っていた。ところが、レポートで下駄を履かせても15名が不合格。90点以上がわずか3名。う~ん、なんでやねん。それから、およその自己申告とはいえ、勉強時間がえらく長かったのには驚いた。

例年の平均は60~70時間だが、今年は家から出られなかったせいか、5割増しの100時間ちょっと。にもかかわらず、そんな成績である。勉強のやり方がわかりましたとアンケートに書いていたのがたくさんいたけど、勘違いしとっただけちゃうんか。

「腎盂腎炎が女性に多いのは、男女における( )の長さの違いがひとつの要因である」という穴埋め問題の正解率が5割。尿管と書いたのが12名、「膀胱と皮膚の間」というなんともいえない回答が6名。3年生にもなったら尿道くらい覚えてるのがあたりまえやろ。素人さんでも知ったはるわ!

一事が万事である。これでは、何からどう指導していいかわからない。最後の講義の年に向けて、教育のモチベーションが「絶賛の嵐」でえらく上昇していたのに、試験の成績を見て完全に失速してしまいましたわ。

医学部が専門学校みたいになって悲しい、と時々思ったりするけれど、たぶんそれは間違いですな。きっと、専門学校の学生はもっときちんと勉強しているに違いない。

なかののつぶやき
「こういう内容を書くと、なかには、自分のところの学生の不出来を書くのは望ましくない、とかいう教授がいたりする。もちろん、そんな意見はまったく気にしてないからこうして書いている。うちの学生だけが特殊だとは思えない、というのが理由のひとつである。はたして、全国の医学部の先生たちは同じような悩みを持ってはおられないのだろうか。そこのところは気になってしかたがない」

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