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■NEWS 新型コロナで深刻化する「神経発達症に伴う睡眠障害」―小児神経の専門医らがメラトニン製剤承認の意義を解説

登録日: 2020-08-05

最終更新日: 2020-08-14

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神経発達症(発達障害)の小児に特に多いとされる睡眠障害。自閉スペクトラム症(ASD)の50~80%、注意欠如・多動症(ADHD)の25~50%に発生するなど神経発達症では睡眠障害が高頻度に合併することが報告されているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大と外出自粛は、神経発達症の小児と家族に多大なストレス・不安感を引き起こし、睡眠障害の発生頻度がさらに増加することが懸念されている。

そうした状況の中、日本小児神経学会から早期承認要望が出されていたメラトニン製剤(商品名:メラトベル)が「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善」を効能・効果として今年3月に承認、6月に発売されたのを機に、小児の睡眠障害の実態と今後の治療について専門医らが解説するメディアセミナー(主催:ノーベルファーマ)が7月30日、オンライン形式で開催された。

睡眠衛生指導を実践した上で薬物療法を

セミナーには林雅晴氏(瀬川記念小児神経学クリニック、淑徳大看護栄養学部教授)、三島和夫氏(秋田大院精神科学講座教授)が講師として参加。

林雅晴氏

小児神経学を専門とする林氏は、神経発達症に合併する睡眠障害の問題について「ASDでは入眠障害、中途覚醒、概日リズムの障害、夜驚症など、ADHDでは入眠障害、むずむず脚症候群、中枢神経刺激薬による入眠障害、過眠などがみられる。睡眠障害を放置すると、学校・社会に適応できず、不登校にもつながる。逆に睡眠障害が改善すると、体力や学習機能も回復しQOLが向上する」と指摘。

睡眠障害への対応は「睡眠衛生指導に加え、高照度光療法や認知行動療法を試み、それでも改善しなかった場合に薬物療法に進むというのが現在のスタンダード」と述べた。

薬物療法としては、これまでメラトニン製剤が承認されていなかったため、メラトニンのサプリメント等を個人輸入して使うか、成人の入眠障害を適応症とするメラトニン受容体作動薬ラメルテオン(商品名:ロゼレム)を適応外使用で小児にも使うケースが多かったとし、国内で初めてメラトニン製剤「メラトベル」が承認されたことの意義を強調した。

臨床試験で「日中の機嫌や異常行動の改善」も確認

学会として早期承認の要望を出すに至った背景について林氏は「(神経発達症に伴う睡眠障害に)メラトニンが有効とされながら、サプリメントや試薬しか使えない現状をなんとか改善したいということでメーカーと一緒に活動を続けてきた。治験には学会員も多く参加していたため、2019年(1月)のタイミングで厚生労働省に要望書を出した」と説明。

神経発達症の小児を対象としたメラトベルの治験では「入眠潜時(入床から入眠までの時間)の短縮」がみられたほか、「日中の機嫌や異常行動の改善」もみられ、安全性も確認されたとした。

林は「メラトニン製剤は、神経発達症の小児に日頃から対応している小児科の先生方に新たな治療オプションを提供する」「COVID-19に関連した神経発達症における睡眠障害の治療に福音をもたらす」と期待感を示しながら、診療に当たっては「睡眠衛生指導を徹底して行った後に薬を使うことが大切。神経発達症の診断に関しても、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)などを用いて慎重に行っていただきたい」と注意を促した。

日本の子どもは圧倒的に睡眠不足

一方、睡眠の問題に詳しい精神科医の三島氏は「世界的に見て日本の子どもは圧倒的に睡眠不足」と、神経発達症の小児に限らず日本の子どもの睡眠問題は深刻な状況にあることを強調。

三島和夫氏

神経発達症では「疾患そのものの影響でメラトニンの分泌リズム、体内時計のリズムがずれて、通常子どもが眠る時間になってもなかなか眠気が出ず、(朝は)登校の時間になっても眠気がとれず起床できないという、寝つきの問題と起床時の問題が生じる。親御さんが早寝させようとしても、体内時計が十分にセットアップされていないので寝床に入っても眠れない。夜中に親御さんと子どもでバトルになるようなケースもある」とし、体内時計に働くメラトニン製剤が必要とされている状況を説明。

「今回上市されたメラトベルは、メラトニンの1型受容体を介した作用で直接的に眠気を誘発し、体内時計を調節する。神経発達症の子どもに見られるような寝つきの悪さの問題を解決できることが臨床試験で証明されている」と述べた。

「メラトベル」がファーストチョイスに

三島氏は、今後の治療について「神経発達症に伴う入眠困難に対するメラトニンの効果が日本の子ども(を対象とした試験)でしっかり証明された。エビデンスに基づいた医療を行うという意味で、メラトベルがファーストチョイスになる」との見方を示した。

同日のセミナーでは、神経発達症の診断がある子どもの保護者を対象に今年2月に行われたアンケート調査(有効回答数1168人)の概要も紹介。

「子どもに睡眠障害がある」とする回答は60%に達したが、そのうち睡眠障害について「医師への相談経験がある」ケースは72%にとどまり、28%は「相談経験がない」としている。

■メラトニン受容体作動性入眠改善剤「メラトベル顆粒小児用0.2%」(ノーベルファーマ)の製品概要


【成分名】
メラトニン

【効能・効果】
小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善

【用法・用量】
通常、小児にはメラトニンとして 1 日 1 回1mgを就寝前に経口投与(症状により適宜増減、1 日 1 回4mgを超えないこと)

【製品サイト】
https://nobelpark.jp/

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