74歳女性が、左側腹部の腫脹を主訴に外来にやってきた(写真)。「悪いものじゃないですか?がんとか心配で……」と不安そうな顔をしていた。自宅近くのクリニックでは診断がつかず、大学病院の外来を受診したのだ。初療にあたった初期研修医は詳しく病歴を聞き、今までの検査結果などを整理し、慣れないエコーを当て、また悩んでいた。
私が隣の診察室で診療していたところ、研修医が相談にきた。「ヘルニアのようなのですが、痛みもないし、なんだかよくわかりません。本人は元気で食欲もあって前医の採血でも異常は認められません」。私は、「数週間前に同じ所に痛みはなかった?」と質問した。研修医はあっけらかんとした顔をして「数週間前ですか?」と怪訝そうに私を見た。
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