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【書評】人間国宝による『一歩進んだグラム染色の見方』の金字塔ッ!

No.5001 (2020年02月29日発行) P.64

忽那賢志 (国立国際医療研究センター国際感染症対策室医長)

登録日: 2020-02-26

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これまで何度か山本師範に症例を提示され、「このグラム染色からどういう病態を考えるのか?」という検討会を行ったことがある。「どういう微生物」ではなく「どういう病態」であるのがポイントであり、もはや微生物だけでなく病態までグラム染色で読めてしまう領域に師範は到達されているのである。それは時に感染症ですらない。同じグラム染色の所見であっても、読む人が違えばここまで見えるものが違うのかと毎回感嘆させられる。まさに人間国宝・山本剛なのである。

しかし、山本師範の境地に達することは我々常人には到底無理だろうと思っていたところに、前作『グラム染色道場』が刊行され「一歩進んだグラム染色の見方」という道標が示されたのであった。主に喀痰について、菌の推定だけに留まらず、フィブリンや繊毛上皮などの背景の評価や、グラム染色で染まっていないからこそ疑われるべき疾患の考え方など、これまでのグラム染色の常識を覆す金字塔であった。

前回書かせていただいた私の書評の中で「次回は髄液編や尿編が見たい」と書いていたが、なんとたった1年でその念願が叶ったのであった。しかも髄液や尿だけでなく喀痰、胸水、血液、便、腹水など様々な検体におけるグラム染色の見方とピットフォールについて網羅的に解説されている。前作は「一歩進んだグラム染色の見方」ということで、ある意味初心者というよりは中級〜上級者向けの内容であったため、「グラム染色とは?」といった基本的な内容は省かれていたが、今作は初心者にも入りやすく、グラム陽性菌とグラム陰性菌の形状からの鑑別、塗抹標本の適切な厚さ、抗菌薬投与による菌体の変化といった基本的事項も冒頭に記載されている。

グラム染色が上達するコツは、グラム染色をするたびに、熟練した上級医や検査技師さんにフィードバックしてもらうことだと私は思っている。しかし、実際にはそのような指導者が周りにいないという人も大勢いるだろう。そんなときは、本書を傍らに置き、顕微鏡と本とを行ったり来たりしながらグラム染色の階段をじっくりと登っていくのがよいだろう。

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