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ぼーっとするのが脳にとって大切[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.81

齋藤 滋 (富山大学学長)

登録日: 2020-01-06

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昼寝をしていたり、温泉宿でゆっくりしているとき、もしくは趣味を楽しんでいる際に、新しいアイディアや妙案が浮かんだことを皆さま方は経験していると思います。

最近の脳研究の進歩により、脳は考えたり行動しているときだけでなく、睡眠中や休息時にも活発に活動していることがわかってきました。つまり、車のエンジンのアイドリングに喩えて「脳のアイドリング」と呼ぶそうです。このアイドリングにより、記憶同士の照合や選別などが無意識に行われ、ひらめきが生じているとのことです。

私は産婦人科医であり、産直などで睡眠不足の生活を送っていましたが、休暇を取ってリラックスした際に、妙案が生まれてきました。22年前に奈良県立医科大学から富山医科薬科大学(現富山大学)に赴任してから、海での船釣りを始めました。朝早く漁港に集合し、夜明けとともに出港します。毎回、美しい朝日と立山連峰に感動してから、釣りのポイントに着き、高鳴る気持ちで第一投を行うのですが、毎回釣れるわけではありません。そんな時、遠くの景色を眺めながら、無我の境地となるように心がけています。そんな時に、行き詰った研究を解決する新しいアイディアや教室人事の妙案が出てくることがあります。ずっとこのことが不思議でたまりませんでした。富山大学医学薬学研究部の井ノ口馨教授は脳のアイドリング研究の第一人者ですが、その研究内容をお聞きした際に、なるほど、と納得いたしました。

本年度から富山大学の新学長に就任して、地方大学の課題がこんなにもあるのかと正直、驚いています。また、多忙なため、大好きな海釣りにも行けていません。これらの諸課題を解決するために、2カ月に1回くらいは心身ともにリラックスしたいと思い直しましたが、果たして実現できるか疑問です。とにかく、仕事が山ほどあります。医療に関わる皆さまも、ぜひリラックスする時間を取って頂き、課題解決や治療法の開発に役立てて頂きたいと思います。

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