株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ラグビーワールドカップ2019日本大会に思うこと[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.71

藤原祥裕 (愛知医科大学病院病院長)

登録日: 2020-01-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ラグビーワールドカップ2019日本大会が大変な盛り上がりをみせている。日本チームが予選リーグ全勝で決勝トーナメント進出を決め、にわかラグビーファンが急増中のようだ。先日、惜しくも南アフリカに敗北を喫し、日本チームの快進撃に終止符が打たれたが、しばらくこの熱狂は冷めそうにない。普段はラグビーなどほとんど見ない私も、自宅で観戦していて思わず体に力が入ってしまった。

最近、病院には相反する様々な要求が突き付けられていると感じる。健全かつ持続可能な経営状態の維持が求められている一方で、国は少しでも医療費を削減しようと躍起になっている。薬剤費・材料費・人件費も毎年増加の一途をたどっている。

世間からは安全で質の高い医療を提供することが求められており、そのために行わなければならない業務は格段に増加しているが、働き方改革と称して、有給休暇の未取得や残業時間の超過を放置すると管理者は処罰される可能性も出てきた。経営上の無駄を可能な限り排除しつつ、必要なところに十分な投資を行い、医療の質と安全性を絶えず改善していく努力が求められている。タイムリーな経営判断によって合理的経営を究極まで追求し、ナローパスを無事通り抜けていかなければならないのである。

ラグビーの話に戻るが、距離も角度もあるペナルティーゴールを決めたり、タックルされて倒れそうになりながらもオフロードパスをつなぎ、トライにつなげたりするシーンを見ながら、思わず自分の身に置き換えてしまった。われわれ病院管理者も、彼らと同じように針の穴を通すような正確性をもって、迅速かつ大胆に絶妙のタイミングで行動し、様々な困難に対応することが求められていると改めて自覚した次第である。

今、ラグビーワールドカップ日本チームのメンバー達はどこにいっても引っ張りだこのようだが、彼らと違って、われわれ病院管理者がどんなに困難な病院経営を成し遂げたとしても、間違いなく誰もこんなに熱狂してくれないだろうと予測できるのは、少々寂しい気がする。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top