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「ネコ型人間」の時代[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.66

木村 正 (大阪大学医学部附属病院病院長)

登録日: 2020-01-05

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漫画「ドラえもん」は私の小学生時代、1969年から始まった。現役世代の皆が知っている国民的キャラクターである。では、なぜ「イヌ型」ではなく「ネコ型」ロボットなのだろうか。

医師の組織をみていると、集団規律と上下関係を重視し、上位職に忠誠を尽くすタイプの、集団で狩りをする「イヌ型」人間が時に不人気なことがある。上からみると頼りになり、良い医師として大成して欲しいと思う。しかし、「自分が上にしている通りに、なぜ下は自分に接しないのだ?」と考えがちで、それが高圧的態度と取られてしまい、気の毒なことがある。その反対が「ネコ型」人間である。

興味があると寄ってきて素晴らしい能力を示すが、興味がなくなると去ってゆく。上下関係にゆるく、下が何を言おうと気にしない。アイデアは豊富で、実行力があり、個別に狩りをしてきた習性のまま、放し飼いにしておくと自分で餌を取ってくる。それなりに義理は感じているようで、寝るときは自分の寝床に帰ってくる。最近の医師たちの気質や行動は、だんだんイヌ型からネコ型に変化しているように感じる。もちろん組織なので、イヌ型の行動様式は必要である。しかし、大学でイヌ型を求める雰囲気を強く出すと、どうも人気がない。ネコ型の中で組織をまとめるにはどうすればよいか?医師の共通の興味は患者であり、医療である。皆ここには寄ってくる。

では、なぜ、ドラえもんはあそこまでのび太君のために協力し、アイデアを出し続けるのか?のび太君の手下であるから尽くすのではなく、きっと、のび太君がとても不完全だから興味を持ち、部屋に居候している恩義があるからだと思う。この行動様式はまさに「ネコ型」で、「イヌ型」ロボットでは成り立たない。よくできた漫画である。もし、のび太君が完全無欠の大人に育ったら、ドラえもんは彼の元から去ってゆくであろう。

厳格なガバナンスには逆行するが、大学病院が医療を中心に据え、ゆるい雰囲気で今の医療が未完成であることを伝え、若者の探求心に火をつけるような運営が医師のネコ型人間化時代には必要かもしれない。

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