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医師の働き方改革に関連し応召義務について思うこと[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.65

渡辺雅彦 (東海大学医学部付属病院病院長/東海大学医学部整形外科教授)

登録日: 2020-01-05

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働き方改革法案が2018年に成立した。医師においては2024年4月までの猶予期間を設け、時間外労働時間の削減に向けた実効性のある取り組みを推し進めるとし、「応召義務等の特殊性を踏まえ、長時間労働等の勤務実態を十分考慮しつつ、地域における医療提供体制全体の在り方や医師一人一人の健康確保に関する視点を大切にしながら検討を進める」とした。医師の健康確保が最重要課題であることに否やはないが、どう取り組むべきか頭を悩ます。医師の特殊性からのポイントは、応召義務、タスクシフティング、宿日直、自己研鑽、時間外労働時間の上限規定、とされている。

応召義務とは、医師法19条に定められている「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」である。応召義務は我々医師にとって倫理規約のようなものであるが、基本的には医療体制が十分に整っていない時代に、本来であれば大規模病院が担うべき救急医療を一般開業医に求めるために定められた法律であり、医師の職・住の分離が進み、救急医療体制が発達した現代では、その存在意義に疑問がある。

現に、アメリカやドイツでは医療を契約ととらえ、患者選択や診療拒否の自由を明確にしている。しかしながら、この契約の考え方が行き過ぎると、時に貧しい人々などの社会的弱者を切り捨てることにつながりかねず、私個人としては我々医師に染みついた応召義務の概念は、倫理感として非常に重要であると考えている。しかし、この応召義務により特にモラルの低い患者への対応等で過重な労働を強いられることは厳に避けなければならない。

今日、救急医療や本当に治療が必要な患者に対する時間外の医療提供体制は十分に構築されている。法律で病院や医師を縛るのではなく、宿日直体制のフレキシブルな見直しやタスクシフティングにより、適切な医師の働き方改革を模索しなければならない。とは言え、愚者にはなかなか具体的な名案が浮かばず、悩み多き昨今である。

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