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情報技術(information technology)を考える[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.47

大和田倫孝 (国際医療福祉大学病院病院長)

登録日: 2020-01-03

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情報技術(information technology)の進歩が著しい。

スマートフォンは本当に便利ですが、一方で記憶する能力が著しく低下し、人間がますますバカになる気がします。以前は重要な人物や会社の電話番号、住所あるいは道順などは暗記していたものですが、最近はスマホに記憶させています。また、お礼などは葉書や手紙で行っていましたが、最近はメールが中心と思われます。メールは早くて便利なのですが、大きな欠点があります。それは漢字を覚えなくても何となくわかっていれば変換の際に探すことができます。国語辞典など開く必要がありません。道案内のナビシステムも同様で、道順を覚える必要がありません。このような環境が続くと人間の記憶力はますます低下し、脳も萎縮して、将来頭が小さな円錐形のような「ちびまる子ちゃんに出てくる“永沢君”」のような顔になる気がします。

雑誌の電子化も進み、学会誌もペーパーレスが多くなっています。紙に印刷された雑誌は何百年経過しても読むことができ、『源氏物語』や『枕草子』などのように生き残れます。ペーパーレスではこれが叶いません。USBメモリーやCD-ROMでは何が書いてあるのか、パソコンを使わないとわからず、また、パソコンの進歩は著しく、旧型では開けない事態も考えられます。電子化では過去を振り返るのが困難になり、伝統を引き継げない気がします。

医療界においては人工知能(AI)によって確定診断が可能になりつつあります。数々のデータを入力すると、AIが診断と治療法を提示します。さらに、手術もAIに指示されて、ロボットが行う時代になりそうです。膨大な医学知識を苦労して吸収するよりも、AIを扱う技術者が重宝される時代がきそうです。そうすると、医師の仕事は何が残るのでしょうか。患者の個人差は大きく、また、心の面も重要なので、AIがとって代わるのはまだ先だと思いますが、AIには学習能力があると言われており、患者さんの顔色、表情により対応を変えることが可能になり、そう遠くない時期に、医師はAIの奴隷に成り下がる時代がきそうです。

物事は進歩のみではなく、調和が必要です。時には不便さを楽しみ、ほどほどの進歩で折り合いがつくことを願っています。

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