株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

地域医療構想実現のための総合力[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.39

林 篤志 (富山大学附属病院病院長)

登録日: 2020-01-03

最終更新日: 2019-12-20

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2025年に地域医療構想を実現する、という方針が厚生労働省から打ち出され、都道府県で調整することになっている。一言で公的病院といっても開設主体は様々であり、自治体、日赤、済生会、厚生連などが混在している。私どもの富山県でも調整会議は行われているものの、実質的にはほとんど進んでいないように見受けられる。

今まで開設主体別で業績評価や経営方針が出されていたものを、いきなり都道府県単位でまとめる、というのは無理があるように思われるが、これからの日本の社会は、今まで経験したことのない人口縮小社会となるので、現実を考えれば地域医療構想を考えざるをえないと思う。それでは、いかに異なる開設主体間や医師派遣を行っている大学医局間の壁を乗り越えて、都道府県単位での地域医療構想を実現していけるのか?その鍵は、日本人の持つ「総合力」であるように思う。

昨年の世界陸上では、日本チームが男子400mリレーでアジア新記録を出して見事銅メダルを獲得した。1人ずつでは100mを10秒で走る4人が、リレーでは37秒台で走れる。これは個人の力ではなく、総合力の勝利と思う。また、ラグビーワールドカップでは、日本は予選を4連勝してベスト8に初めて入り、世界を驚かせた。個々の選手の力を強豪国と比べれば劣っているものの、15人のチームとなって団結すれば、日本は強豪国にも打ち勝てることを見事に示してくれた。

我々日本人が世界から最も尊敬されているこの「総合力」を十分に発揮していく以外に、縮小に伴う諸問題を解決する方向性はないと考える。利害やプライドなどが交錯する思惑を乗り越え、地域の実情に即して同じ方向を向き、富山県民のために県内の病院が1つにまとまり地域医療構想を実現できるよう、富山県の厚生部とも連携して富山大学附属病院が役割を果たしていけるように頑張りたいと思っている。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top