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地域医療─どうなる? どうする?[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.29

夏越祥次 (鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科教授/鹿児島大学病院病院長)

登録日: 2020-01-02

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日本の人口は現在約1億2648万人であるが、人口減少が進み、2040年には約1億1336万人、2060年には約9833万人になると推定されている。鹿児島県は現在約159万人であるが、2040年には約131万人に減少し、うち、老年人口が37.5%を占めると推測されている。先ずは、交通や流通の不便な離島・僻地の人口減少が加速すると考えられる。既に、都市と地方の医師数の偏在が生じている。鹿児島県には9地区の二次医療圏があるが、鹿児島市を含む医療圏の医師数は全国平均を上回っているが、その他の二次医療圏の医師数は不足している。すなわち、県内でも鹿児島市とそれ以外の地域での偏在が起きており、さらに各二次医療圏で診療科の偏在がみられている。特に離島・僻地では医療過疎となり、今後益々この傾向が進んでいくと考えられる。

地方大学の医師不足に加え、若手医師の専門医取得のための症例経験やキャリアアップを考えると、大学から地方の中・小病院への医師派遣も厳しい状況になっている。1つの解決策として、二次医療圏ごとに病院の集約化による基幹病院の設立を行うと、各診療科に多くの医師を集めることが可能になる。医師が増えると、一~二次救急の受け入れが容易となり、研修医教育や、当直を含めて分担ができ、働き方改革も進めることができる。将来、遠隔医療システムが導入されると、大学病院や大規模病院と同等な診療技術を学ぶことも可能になり、若い医師にとって地方基幹病院でもキャリアアップを行うことができる。

将来の人口減少に伴う地域医療、特に僻地・離島の医療過疎化を防止し、患者側のニーズに対応するためには、医療資源を最大限に有効活用しなければならない。各二次医療圏にある市町村の行政の理解と、国公立・私立の病院形態にかかわらず、基幹病院設立のために痛み分けが必要である。さらに二次医療圏ごとに、地域基幹病院への交通網の整備が必要と考えられる。

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