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ポケットエコーを常に携帯し、質の高い在宅緩和ケアを提供[クリニックアップグレード計画 〈医療機器編〉(13)]

No.4991 (2019年12月21日発行) P.14

登録日: 2019-12-19

最終更新日: 2019-12-19

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高齢者の増加に伴い、在宅医療を必要とする患者像が多様化している。訪問診療でスクリーニング検査を行うなど、より個別化された質の高い医療を提供することが求められるようになっている。シリーズ第13回は、訪問診療を行う医師全員が常時ポータブルタイプのエコーを携帯し、聴診器を当てるのと同じような感覚で超音波検査を実施、画像から得られる所見を基に質の高い在宅緩和ケアに取り組むクリニックの事例を紹介する。

  

在宅医療が担う大きな役割の1つに、長年住み慣れた自宅での療養を希望する患者と家族を支える「在宅緩和ケア」がある。内閣府や厚生労働省はACP(アドバンス・ケア・プランニング)の普及を進めており、終末期を中心とした在宅療養患者の苦痛を長引かせないような医療や介護をいかに提供できるかが、在宅関係者の大きな課題となっている。

在宅患者で多いのは、疼痛や腹満、尿閉などの症状を訴えるケース。在宅の現場では患者とのコミュニケーションが十分にとれない場合もあり、限られた情報の中で病態の把握や処置の可否を判断することがカギとなる。こうした状況を踏まえ、詳細な診断や次の治療につなげる判断に有用なツールとしてポータブルエコーを駆使しているのが、横浜市の野庭団地内にある「つながるクリニック」の八森淳院長だ。

医師全員がポータブルエコーを携帯

八森さんは自治医大を卒業後、青森県職員として公立病院・クリニックでの勤務を経て、地域医療振興協会に11年間所属。同会病院では診療と並行して、全国各地の自治体で医療介護連携や地域包括ケアシステムの構築に携わり、講演活動なども行ってきた。開業を決意し、これまで蓄積してきたノウハウを実践する場に選んだのが、1970年代に建設され住民の高齢化が進む野庭団地だった。2016年9月に開業、常勤医師3人で約200人に訪問診療を行う。

「当院はなるべく近い範囲の訪問診療を中心に、何かあったらすぐに行けるスピーディーな対応を重視しています。末期のがん患者さんも多く、低侵襲で胸腹水や残尿の量を確認できるポータブルタイプのエコーから得られる所見は在宅緩和ケアに有用で、医師全員が必ず携帯しています」(八森さん)

在宅に必要な機能に絞って低価格を実現

同院が導入しているのは、日本シグマックスの「ポケットエコーmiruco(ミルコ)」(https://www.sigmax-med.jp/medical/product_miruco)。mirucoの最大の特徴は、コンパクトで合計重量もわずか450gと持ち運びが便利な点にある。コンベックスプローブが19万8000円、リニアでも29万8000円と低価格であることも魅力だ。カラードプラはなく、モードもBモードのみと訪問診療の現場で必要な機能に限定することで、低価格を実現した。

操作方法はシンプルで扱いやすい。プローブとタブレットの付け外しで、アプリが自動的に起動もしくは終了するため、現場で速やかに利用できる。タブレット画面で部位や深度、体型を選択し、描出したい部分にプローブを当てれば画像の取得が可能だ。計算・計測機能は搭載されていないが、画面の端に1㎝刻みのスケールが表示されているため、腫瘍の大きさや腹水の量などが推測できる。

形態的な変化の確認には十分な機能

は同院で撮影したmirucoのエコー画像。Case①は、2年前に卵巣癌で腹式単純子宮全摘術、付属器・大網切除、横行結腸部分切除、両側尿管ステント留置術を受け、その後化学療法で完全寛解となるが1年2カ月前に再発。S状結腸にステントを挿入後、ⅢC期で紹介された69歳の女性患者の腹部エコー画像。

同院初診時に腹部膨満感や腹痛を訴えていたことから、腹部超音波検査を実施した。大腸の拡張と腸液貯留が確認できたため腹膜播種による癒着性イレウスと判断。オクトレオチドを持続投与、デキサメタゾンの投与を開始し、50日後に卵巣癌で死亡したが、その間腸閉塞は悪化することなく経過した症例だ。

Case②は、総合病院臨床腫瘍内科で2カ月前に3型進行胃癌と診断、化学療法の適応がなく紹介された73歳の女性患者の画像。腹部膨満が強く、上腹部痛、圧迫感を訴えていた。大量の腹水が確認できたため、mirucoで穿刺部位を決め、その場で腹水穿刺を行ったところ症状が安定した。

同院医師で消化器外科専門医の杉山昌生さんはmirucoの有用性についてこう語る。

「腫瘍が何かという質的診断はできませんが、胆管や尿管の拡張、水腎症の有無という形態的な変化を見るには十分な機能があります。訪問診療の現場ではすぐに治療しなければ手遅れになる状況や苦しんでいる原因を見極め、取り除いてあげなくてはいけないケースがよくあり、その判断に役立っていると感じています。胸水や腹水の穿刺なら問題なくできますし、低コストなので1台あると訪問診療の幅が広がるツールです」

在宅のメリット生かした医療を提供していく

開院から約3年が経過し、訪問診療の患者数も安定している中、今後同院が地域医療に取り組むコンセプトは“在宅入院”というものだ。

「今までであれば入院する必要があった患者さんも、mirucoのような検査機器やICTを活用すればかなりの部分を在宅で診ることができます。特に終末期の患者さんは自宅の方が安心して時間を過ごすことができるので、その環境を整えてあげたいと思います。“在宅入院”という言葉は、希望した患者さんには可能な限り入院と遜色ない在宅医療を提供していく、というメッセージを込めたもので、商標登録もしています。終末期医療の重要性が増していく中で、『在宅でできるだけ頑張っていこう』という流れが広まっていくキーワードになってくれたら、と考えています」(八森さん)

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