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ラダック再訪(その1)─JK問題[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(267)]

No.4975 (2019年08月31日発行) P.61

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-08-28

最終更新日: 2019-08-27

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昨年に次いで、この夏休みもインド最北部のラダックを旅行してきた。基本的に同じ場所へは観光に行かないことにしているのだが、今回は例外だ。理由はもちろん、去年行って素晴らしかったから。
いざ出発、の前日、JKを巡る不穏なニュースが飛び込んできた。JKといっても女子高生のことではない。ラダックが属するジャム・カシミール州のことである。

この州はパキスタンに接する3つの地域から成り立っている。東側に位置して中国とも国境を接するのがラダックで、主な宗教は仏教。西北が9割以上をムスリムが占めるカシミールで、西南がヒンドゥー教の多いジャムとなっている。

出発の前日、ジャム・カシミール州から自治権を剥奪し、インド連邦直轄地にするとの発表がなされた。パキスタンからの越境テロに対応するためというのがインド側の主張だが、これまで実質的には両国の中立的地域だったのをインドの直轄地にするというのだから、パキスタンは猛烈に反発。

なんというタイミングで、なんちゅうことをしてくれるねん、ホンマに。それに、今回は、パキスタン国境に近いハヌーという村まで行くことになっている。SNSでは、観光目的程度なら、そんな所まで行かない方がいいとエキスパートが書いている。

しかし、いまさらそんなこと言われてもなぁ。まぁ、いきなり戦争が始まる訳でもあるまい。それに、高校の同級生がインド大使をやっているから、万が一のことがあったら助けてくれるに違いない。などと、甘い言い訳を見つけながら、ちょっと迷いつつも行くことに。

実際には、まったく問題などなかった。それどころか、ラダックは、これまで一緒にされていたジャム・カシミールとは別の独立した直轄地になり、宗教上の軋轢がなくなるというので歓迎ムードだった。

結果論とはいえ、こういうのは現地へ行ってみないとわからんもんである。無謀なことはダメだけれど、怖がりすぎるのもよろしくないということだ。そういえば、4年前には、同時多発テロ直後のパリにも行ったんやったなぁ。

ということで、6回にわたってラダック再訪記を書いていきます。これほど素晴らしい旅はないというほどバラエティーに富んだ12日間でした。お楽しみに!



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