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希望と絶望(その1)─希望編[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(258)]

No.4966 (2019年06月29日発行) P.61

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-06-26

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『めばえ適塾 ジュニアドクター育成塾』というプロジェクトが、大阪大学、京都大学、関西大学を中心におこなわれている。JST(科学技術振興機構)の支援を受けた事業で、小学校5年生から中学校3年生までの子どもたちに科学の面白さを知ってもらおうというのが目的だ。

その講師にお呼びいただいた。引き受けはしたものの、どのレベルの話をしたらいいのかわからない。お世話役の先生からは、賢い子ばかりなので、子どもだと思わずにいつも通りで、と言われたけれど、さすがにそれではわからんだろう。

考えあぐねた末、子どもたちと対話しながら、レベルを探りながら進めることに。タイトルは『からだと病気』。出席者はけっこう多くて100名ほどだった。

人間のからだには何個の細胞があるか、とか、細胞の直径はどれくらいか、とかの質問から始めた。知識はないけれども、どんどん答えてくれる。つかみは十分だ。

メインの内容は病理学。まず、知っている病気の名前をあげてもらって、それを整理する。そして、感染症、がん、心血管系の病気、などに分類して、おおまかにこんな病気がありますよ、と、まとめていこうという心づもりである。

子どもたちのことを侮っていた。身近な病気として、骨折、下痢、風邪、とかがメインだろうとふんでいた。しかし、それはとんでもない勘違いだった。

白血病、脳梗塞、アルツハイマー病、はては、脊髄小脳変性症とかサルコイドーシスまで。どこで聞きかじったのか知らないが病気の名前がいっぱい出てくる。もちろん、どのような病気かは理解していないのだが、それだけに説明のしがいがある。

おおよそ1時間の「チョークトーク」-実際にはホワイトボードマーカートークだけれど-の後の質疑応答も活発で、15分以上にもおよんだ。大学では、一度たりともこんな活発な講義を経験したことはない。

ほんとうに面白かった。その時の録画を見ると、あまりに嬉しそうで、自分でも驚くほどだ。字が下手だし、いっぱい間違えているのはお恥ずかしい限りだけれど…

じつに楽しそうに参加してくれた子どもたち。本当に目がキラキラと輝いていた。この子たちはこれからどのように成長していくのだろう。(つづく)

なかののつぶやき
「うれしそうに講義している姿。どんな講義やねん、と興味のある方は、【めばえ適塾×仲野】で検索してみてください」

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