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深部静脈血栓症のマーカーとしてのD-ダイマーの意義は?

No.4964 (2019年06月15日発行) P.52

窓岩清治 (東京都済生会中央病院臨床検査医学科部長)

登録日: 2019-06-12

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下肢の深部静脈血栓症のマーカーとしてのD-ダイマーの意義と具体的な測定方法についてご教示下さい。ほかに有効なマーカーがあれば併せてお願いします。

(千葉県 M)


【回答】

【血栓症マーカーとしてだけでなく,凝固線溶系マーカーとして有用】

D-ダイマーは深部静脈血栓症を含む静脈血栓塞栓症を除外するための検査や播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断のための補助検査として日常臨床で広く用いられています1)2)

D-ダイマーは,血液凝固系の活性化に伴いフィブリンが形成され,これを線溶系の活性化により生じたプラスミンが分解したものです。敗血症などで線溶系が強く抑制される場合には,血栓が生じてもその分解が進まずD-ダイマーの動きが乏しいことがあります3)。このように,D-ダイマーは単なる血栓症マーカーとしてではなく,「凝固線溶系マーカー」として認識するとよいでしょう。

体内で生じるD-ダイマーは均質なものではなく,様々な大きさの分子から構成されるフィブリン分解産物の集合体です。D-ダイマーは,この集合体のうち最小の共通単位であるD-D分画という部分を特異的に認識するモノクローナル抗体を利用して,免疫化学的に測定されます(図1)。対象疾患に応じて定量測定される濃度領域が異なります。DICの診断に用いられるD-ダイマー測定系が主に「μg/mL」の濃度を測定対象範囲としている一方,静脈血栓塞栓症の診療では「ng/mL~μg/mL」の濃度領域を測定できる系が用いられます。一般に高感度D-ダイマーと呼ばれる測定系は,測定容器の壁面などに固相化した抗ヒトD-ダイマー特異抗体と酵素や蛍光物質で標識した特異抗体により,検体中のD-ダイマー分子を「数百ng/mL」の低濃度領域で定量測定するものです。

ラテックス凝集法は,D-ダイマーに対する特異抗体を介したラテックス粒子の凝集に伴う濁度変化を定量化するもので,汎用性のある自動化測定装置が普及しています。一方でイムノクロマト法を応用したD-ダイマー測定系は,抗ヒトD-ダイマーマウスモノクローナル抗体を試験紙上に固相化し,金コロイド標識抗ヒトD-ダイマーマウスモノクローナル抗体を組み合わせたもので,反射光の強度からD-ダイマー濃度を算出し,最小検出限界が200ng/mLとされます。

測定系,すなわち測定試薬や測定装置の違いによりD-ダイマーの測定結果が異なることがありますので,施設間で比較する場合には注意が必要です。また,国内で用いられているD-ダイマー測定値の表示は,純化D-ダイマーに換算したもので,欧米で用いられているフィブリノゲン濃度に換算した測定系とはおおむね2倍の差が生じることが知られています。

トロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)や可溶性フィブリンモノマー複合体(soluble fibrin monomer complex:SFMC)は,血液凝固反応の活性化状態をとらえる鋭敏な凝固系分子マーカーとして実臨床でも少しずつ用いられています。血栓症の発症初期にはD-ダイマーに先行してTATやSFMCが増加することから,静脈血栓塞栓症の急性期の指標として有用と考えられます。いずれもラテックス凝集法を利用した汎用性の高い自動化測定装置が開発され,日常臨床への普及が期待されます。

【文献】

1) Wells PS, et al:N Engl J Med. 2003;349(13): 1227-35.

2) 朝倉英策, 他:日血栓止血会誌. 2017;28(3):369-91.

3) Madoiwa S, et al:Int J Hematol. 2006;84(5):398- 405.

【回答者】

窓岩清治 東京都済生会中央病院臨床検査医学科部長

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