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【書評】医学の側面からマインドフルネスを“知りたい”人へ

No.4960 (2019年05月18日発行) P.60

中野有美 (南山大学人文学部心理人間学科教授)

登録日: 2019-05-15

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マインドフルネス、それは瞑想の一つだ。この2~3年、マスコミや市民向けの読み物等で心の健康に関する話題としてしばしば取り上げられるようになった。聞いたことがない、と言う人は極少数であろう。ではマインドフルネスについて質問された時、医療の専門家として何をどのように答えるであろうか。本書は、精神科医はもとより精神科以外の医療関係者に、現在、医療領域で扱われているマインドフルネスに関する最新の知見を、本質的かつ包括的に、しかも、とても分かりやすく示してくれている。

マインドフルネスは、仏教に由来した一つの心のあり方を指す。東洋生まれのそのあり方をジョン・カバットジンが米国でストレスマネージメントに用いて成果を上げてきた。また、その一方で、うつ病や不安障害を始め多くの精神疾患で効果を示してきた精神療法、“認知行動療法”と溶け合って新しい風を吹かせている。

本書では、このようなマインドフルネスそれ自体の概論から、なぜ、今、マインドフルネスが注目されるのか、治療としてどのように用いられているか、どのような疾患(身体&精神)に対して用いられ、どのような効果が検証されているか、脳科学の立場からの研究の進捗、さらには医療者、医学生の疲労の回復に有用であること、そして学習機会の紹介まで、国内の専門家達がしのぎを削ってペンを取っている。

私が小学生の頃、ある先生は、授業が始まったにもかかわらず教室がざわついていると、たびたび「沈思黙考!」と生徒に号令をかけた。その号令とともに、生徒は数秒以内に座りなおし黙って目を閉じる。先生の合図とともに生徒はそっと眼を開き、教室に2~3分前とは別の空気が流れているのを感じる。先生はおもむろに授業を始める。日本には、以前から、このような方法で心を落ち着かせ、今ここに目を向ける慣習がある。これが医学的な技術としてどのように洗練され、どのように活用されているのか、この本がすべて答えてくれる。

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