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東京で3度目のオリンピックが開催される頃[特集:医療の近未来予想図]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.63

山中 寿 (東京女子医科大学膠原病リウマチ内科学講座教授・講座主任)

登録日: 2019-05-05

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  • 東京は、3度目のオリンピックを迎える準備で活気づいている。前回のオリンピックは暑い夏だったなあ、としみじみ思う佐藤さんは63歳の女性である。最近、指が腫れぼったいことに気が付いた。しばらく前から指輪が窮屈に感じ、最近は結婚指輪も外しっぱなしにしている。最近見たテレビの番組で、以前は、関節リウマチという大変な病気があったが、医学の進歩でずいぶん減ったと話していた。以前に発症した人は、まだ関節の変形に悩んでいるが、最近では発症する人が減ったらしい。たばこが激減したこと、歯科衛生が行き届いて歯周病が減ったこと、ω3脂肪酸の摂取量が増えたことで発症が減り、しかもリウマチを完治させる画期的な薬剤が開発されたため、とテレビの健康番組で、白衣を着たお医者さんが話していた。

    「そういえば、白衣を着たお医者さんにしばらく会っていないなぁ」なんて考えながら、佐藤さんは、近くのコンビニへ向かった。コンビニの一角には病気診断コーナーがあり、ずらっと並んでいるキットのなかに、「リウマチ診断キットS」を見つけた。セルフレジに行って3980円をスマホで決済した。自宅で開封し、指示書通りに人差し指の腹からとった血液をチューブの中のろ紙に吸い取らせ、必要項目にチェックした遺伝子検査の同意書と一緒に封筒に入れ、郵便ポストに投函した。さらに腫れている指の写真をスマホで撮影し、指定のサイトにアップロードした。

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