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医療提供体制改革の必要性[特集:医療の近未来予想図]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.61

桃井眞里子 (自治医科大学名誉教授/両毛整肢療護園)

登録日: 2019-05-05

最終更新日: 2019-04-25

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  • AI導入等の医療技術の加速度的進歩は当然すべての領域にあるだろうが、近未来には医療体制が抜本的に改革されていることが期待される。OECD Health at a Glance 2017によれば、日本の医療体制を医療アウトカムの良いフランス、スウェーデンと比較すると、人口当たりの医師数0.7倍、0.57倍、国民一人当たり外来受診数2.0倍、4.3倍、医師一人当たりの外来診療数2.7倍、7.8倍、医師一人当たり急性期病床数1.9倍、4.7倍であり、日本の医師不足と医師の過重労働は明らかである。

    高齢者は医療需要を引き上げるため日本の近未来に医師過剰は来ない。医師の地域偏在幅は世界的にも小さい方であり、偏在を全面に出した解決策は新たな医師不足地域を作るだけである。まして、医師の勤務時間上限を引き上げるなどの姑息な方策は、医療安全を無視した愚策であり、過重労働の維持、患者の低満足度の継続となる。医療提供体制は抜本的改革を要している。

    医師の絶対数の増加、専門性の偏在是正と同時に、医師不足、勤務医の過重労働、医療安全に対応するには、電子カルテの発展による書類作成時間の短縮と医療機関間の診療情報共有体制の進化のほか、AI参画は、診断支援と治療選択の標準化、画像診断と病理診断支援により各専門医の集約配置などを可能にする。AIは、低価格の腕時計型家庭用モニターによる遠隔診療の推進をも担う。予防医学の強化とフリーアクセスの見直しも不可欠である。

    日本は小規模病院が多く、効率の悪い医療体制であるが、約7割が私立病院のため、病院統廃合という抜本的改革は進まない。このままでは超高齢社会で医療費だけ膨大となり、医師は小さなチームで過重労働なのに特に外科系や救急などでアウトカムの悪い低効率医療が持続することになる。

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