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超高齢社会における近未来医療[特集:医療の近未来予想図]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.21

荒井秀典 (国立長寿医療研究センター理事長)

登録日: 2019-05-01

最終更新日: 2019-04-25

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  • 日本人の平均寿命は年々伸び続けており、現在男性81歳、女性87歳を超えているが、1955年には男性63.6歳、女性67.8歳であったことを考えると、約60年間で20年近く男女とも長生きするようになった。次の60年間でさらに平均寿命が20年延びるとは思わないが、日本老年学会・日本老年医学会合同の「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ」による報告によれば、日本人の高齢者は、歩行速度、脳機能など医学的な側面からの解析を縦断的に行った複数のコホート研究の結果、10歳程度機能的に若返っていることが示唆されている。確かに周りの高齢者を見ても70代、80代で元気で社会的な役割を担い、活躍する高齢者も多くなったように思われ、若々しい高齢者が増えている。

    また分子標的薬の開発や再生医療など医学の進歩により、以前であれば完治できなかった病気も完治させることができるようになり、がんやリウマチをはじめとする様々な疾病の予後を大幅に改善できる時代になった。医学の進歩のみならず、国民皆保険という世界に誇るべき保険医療制度や栄養などの改善も寿命の延伸に寄与しているのであろう。

    このように、様々な疾患に対する予防、治療法の進歩により、日本人は以前に比べ重篤な病気にかかりにくくなり、また死ににくくなっているのは事実である。総じて日本人の健康度がアップしていることは脳血管障害や冠動脈疾患の受療率の低下にも表れているが、特に脂質異常症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病のガイドラインが整備され、予防法が確立している疾患を中心にその傾向が顕著であると言える。年齢とともにその数が減少し、老化の指標とされている歯数についても、高齢者における平均残歯数は近年増加傾向にあり、80歳の高齢者の約半数が20本以上の歯を残していると言われている。さらには、全体として要支援・要介護認定者は増加しているものの、年齢別の新規要介護高齢者数は減少傾向にある。

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