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メリー・ポピンズ リターンズ[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(241)]

No.4949 (2019年03月02日発行) P.63

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-02-27

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自分にとって初めての映画が何だったか、どうにも思い出せない。たぶん近所で観たマンガ映画だったろう。今となってはとても信じられないが、自宅から歩いていける範囲内に映画館が6軒も7軒もあった。

子供たちだけで観に行った初めての映画は今でもよく覚えている。「ガメラ対ギャオス」だ。校区内の映画館とはいえ、小学校4年生にしてはちょっとした冒険だった。

母親が、砂糖のかき餅を有馬温泉名物の炭酸せんべいの缶に入れて持たせてくれた。超満員で座れず、おかきを立ったまま友達と食べつつ観たのが懐かしい。

初めての洋画は叔母に連れて行ってもらった「メリー・ポピンズ」。小学校3年生の時だった。外国映画で字幕が出ると聞いただけで、何日も前から、わぁ、そんなん観てわかるやろうかと、姉とえらく興奮した。

メインストーリーは銀行の取り付け騒ぎだから、たぶん理解できなかったと思う。しかし、面白かったことだけは間違いない。メリー・ポピンズが飛んで来たり、アニメの中に人間がはいっていったりするシーンだけで、子供には十分だった。

メリー・ポピンズを映画化するのに、ウォルト・ディズニーがいかに苦労したかを描いた映画「ウォルト・ディズニーの約束」も面白かった。大好きなエマ・トンプソンが主役を演じていたし。

そんなであるから、54年ぶりに続編「メリー・ポピンズ リターンズ」が公開されると知って、早速、観に行った。驚いたのは子どもがいなくて観客の7割方が中高年であったこと。きっと同じようなノスタルジーを持っている人が多いのだろう。

予告編を観ることもなく行ったのだが、冒頭、メリー・ポピンズが、傘ではなくて凧にぶら下がって飛んでくるシーンで目頭が熱くなった。前作から30年くらいたって戻ってきた、という設定である。

主人公がジュリー・アンドリュースだったらすごいけど、さすがに80歳を超えては無理やわな。しかし、前作でその相手役を務めたディック・ヴァン・ダイクが出演しているのには感動した。90歳を超え、机の上でタップを踏む。ここでまた泣けた。

いやぁ、映画って本当にいいもんですね。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。と書いても、今や、水野晴郎とか淀川長治のことなど知らん人ばっかりかもしれませんなぁ。

なかののつぶやき
「映画が好きとは思います。とはいうものの、観に行くのは年に十数本といったところでしょうか。家でDVDやオンデマンドで観ることもありますけど、やっぱり映画は映画館で観るに限りますよねぇ。銀幕で観たい映画ベストワンはなんといっても『大脱走』。あと『燃えよ!ドラゴン』とか『卒業』とか。もちろん『メリー・ポピンズ』も」

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