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2歳児の超能力?[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(236)]

No.4944 (2019年01月26日発行) P.65

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-01-23

最終更新日: 2019-01-22

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2歳半になる孫の聡(さとし)が年末に遊具から落ちて左上腕骨を骨折した。ギプス生活を余儀なくされたのだが、まるでそんなもの無いかのように生活するのには感心した。子どもの適応力というのは素晴らしい。

しかし、どうにもばつが悪いのか、なんで怪我したん?って聞いたら、しらばっくれていた。怪我のすぐ後に妹が生まれたのだが、なんだか気に入らないらしい。ふざけているつもりなんだろうが、さすがにギプスで叩いたりしたらあかんやろ。

家の片隅に、インドのラダックでお土産に買ってきた小さなマニ車を置いてある。回せばお経をあげたのと同じ功徳があるというやつだ。御利益を信じてるわけではないが、気が向いたらときどき回している。聡もそれを見て回していた。ところが、ある日、いきなりその前で五体投地を始めた。

驚いた。家族に聞いても、誰もそんなことを教えていないという。おぉ、ひょっとしたらこれは、ダライラマがそうであったように、チベット仏教でいうところの生まれ変わりではないのか、ひょっとしたら前世は高僧かと一騒ぎ。

しかし、である。自分の怪我のことをしらばっくれたり、生まれたばかりの妹をギプスでぺちぺちするような不埒な高僧はおらんだろう。彼の地では生まれ変わりとしか考えられない例がいくつもあるそうだが、我が家は日本である。

いろいろ検討した結果、録画してあった「世界ネコ歩き」の番組にブータンだかチベットだかの回があったのを見せたせいではないかということになった。確認したら、確かにマニ車の前で五体投地しているシーンがあった。残念だけれど一件落着。

それから日を置かずして、散歩中の犬とずいぶん長いこと話し込んでいたらしい。話し込むといっても、聡がワンワン、犬もワンワン、と言い合うだけである。しかし、それが何分にもわたったそうな。

それを見ていた聡の伯母、どう見ても犬と会話しているように思えたらしい。そういえば、3歳までの子どもにはいろいろな能力が残っているという話もある。で、ひょっとしたらと思い、ワクワクしながら聡に「わんちゃんと何を話してたん?」と大急ぎで尋ねたら「ワンワン」。単に吠えてただけやったそうです。生まれ変わりと同様、やっぱり、超能力なんかありませんわな。

なかののつぶやき「小さな子どもは笑ったり泣いたりがすごいですね。クリスマスプレゼントを見つけた時は、わーいわーいと叫びながら文字通り飛び回っていたし、悲しい時はこの世の終わりみたいな泣き方をする。歳をとるにつれて喜怒哀楽もすり減っていくんでしょうけれど、1日の間にあんなに嬉しいこととか悲しいこととかがあったら疲れてたまらんような気がします」

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