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『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』を考える─胃瘻の是非からプロセス重視へ、そして尊厳の保障へ[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.19

江澤和彦 (日本医師会常任理事)

登録日: 2019-01-01

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本人の意思を最大限に尊重し、本人・家族と医療・ケアチームが合意を形成するための「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の普及に期待が寄せられている。繰り返される話し合いの中で、患者が医療に対して素人であると同様に、医療専門職は初めて出会う患者の人生に対して素人であり、患者自身の専門家である患者自身から最善の選択にかなうための情報を教えてもらう態度が医療専門職には求められる。臨床所見の改善等の医学的最善が患者にとって最善とは限らず、医学的に無益なことが必ずしも患者にとって無益とは限らないことは留意すべきである。

「患者の意思の確認ができる場合」に、患者の意思決定能力の評価や患者の理解を高める説明方法を考慮する。「してほしいこと」のみならず、「してほしくないこと」に留意する。

「患者の意思が確認できない場合」には、事前指示やアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の有無について、家族、かかりつけ医等に確認する。ACPは、今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセスと定義され、QOLの向上、余命延長等の研究成果も多く、患者の意向を尊重し質の高いケアを実践するために重要な手段となっている。ただし、海外での医学的研究が多く、今後日本人の哲学・文化・風習に馴染んだACPの蓄積が期待される。また、ACPは介入時期が重要であり、早すぎると失敗することが多く、遅すぎると役に立たない。

一連の意思決定プロセスにおいて、本人の意思決定を周囲の皆で支え、本人の価値観、人生観に寄り添い、共に考える姿勢が不可欠となる。医師と患者双方が意思決定に関与する「Shared Decision Making(相互参加型モデル)」が推奨されており、胃瘻の是非を問うものではなく、話し合いのプロセスを重視し、そのプロセスから得られた結果を尊重することに共感している。そして、誰もが人生の最期まで尊厳が保障されることを願ってやまない。

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