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高齢者となって[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.14

山口 徹 (虎の門病院名誉院長)

登録日: 2019-01-01

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75歳、後期高齢者となって、自動車運転免許の更新時に認知機能検査を受け、後期高齢者医療被保険者証と書かれた新しい保険証が届き、「高齢」の文字が実感を持って見える、少し違った世界に入ってきたと感じている。現役だった65歳、前期高齢者のときにはまったく何の認識もなかったので、日本老年医学会の75~89歳を高齢者とする提言には納得感があると思う。

高齢を意識しはじめたのは、70歳になって東京都シルバーパスの取得資格ができたときである。東京都では、2万510円を払ってこのシルバーパスを取得すれば、都内のすべてのバス、都営地下鉄が1年間乗り放題である。東京では、車を運転して都心に出るよりも、バス、電車を利用して移動するほうが余程便利で、健康にもよいので、毎日の通勤にはバスを使っていた。ただ、シルバーパスを使うと、バス乗車時に毎回パスを運転手に見せることになり、皆に70歳以上だとわかってしまうし、また、現役で働いているのに、このパスで乗ることにも抵抗があった。

しかし後者については、ある時気がついた。そうだ、これまで都税を沢山納めてきたのだから、シルバーパスをもらうのは当然だろうと。そして、年寄だと思われたくない話も、混んだ朝のバスの中で立っていると、小学生に「おじいちゃん、ここへ座って下さい」と背広を引っ張られ、歳はごまかせないことを悟らされた。今では、シルバーパスを当然のように使い、シルバーシートに座れるようになった。

高齢者の世界に入って、どう、どんな医師を続けたものか、いささか迷っている。同級生を眺めても、まったく現役時代と変わらず働いている人も少なくないが、老健に移ったり、産業医、健診医として適度に働いている人も多い。高齢社会で働き続ける見本かもしれないが、薬の名前が出てこないことも珍しくなく、医師能力を評価されないでよいのか、と思ったりする。

しかし、医師を辞めてもセカンドライフの設計があるわけでなく、一方で、長い休みを取って旅行に行きたい気持ちもあり、心が揺れる高齢者の入口である。

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